2022年2月18日金曜日

鋼鉄の意思とリハビリ

頚椎損傷のおばあさんが入ってこられました。

お話をしていけばいくほどその意志の強さと「今の体の動き」のレベルの高さには相関が有るな~と感じ入ってしまうような素敵なおばあさんです。歳は私の親とそれほど変わらないような方なんですが、何と言ってもポジティブなその思考回路が全く並じゃない。

もともと50歳の時に洗濯物を干そうとして急な階段の上にあたる二階の廊下を歩いていた時に、そこに有ると思っていた部分がちょうど急な階段の一番上の部分で、足が宙に浮く形になってそのまま洗濯かごごと転落して階段の踊り場の壁に頭ごとぶつかり、頚椎損傷を発症してしまったのでした。

そこからは、首から上は動くし感覚は有るもののそこから下は動きは勿論、感覚も全く無いような状態だったにもかかわらずリハビリの先生とともに(本人曰く)「脳味噌を騙して体を動かすことに専念する日々」だったそうです。

最初は体を動かして車椅子に乗れるようになったらどっかから飛び降り自殺して死んでやろうという考えがその底に有ったらしいのですが、実際はリハビリが進んで感覚、運動能が戻っていくに連れそんなネガティブな考えは雲散霧消。

きちんと食べて、きちんと話して、自らの頭で考え、自分の足で2本脚で立ち上がるというところまで戻しています。もう80歳になろうという方ですが、どん底の時期を耐え抜いて自らの力でここまで機能を戻した女性。

病院に入ってきて機能を戻していく患者さん達に共通しているのは「闘う」と言う姿勢。それぞれに闘い方はありますが、リハの先生と喧嘩をしていても退院して機能を大きく戻した時などは最後に先生と抱き合って涙を流して出ていかれます。

事故や脳血管疾患発生の後に「体が動く動かない」というのは本当に普通です。その日々は必ずしもポジティブなことばかりではありませんし、実際に動かないものもあります。しかし、それでも動く可能性に賭けて、心が沈み込んでしまいがちな患者さんの気持ちを一緒に引っ張り出し、実際に動く能力が回復していった患者さんを見送ることができた時は見守った私自身でさえ目頭が熱くなるのです。

私自身もいつ体が動かなくなるような状態にならない等と誰にもわかりません。しかし、それでも頑張れる患者さんが居ることに心の底から尊敬の念を覚えるとともに、私も日々努力しなければと改めてそんな患者さん達から学びう直すのでした。


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