私のようなヤブ医者でも、日常診療で大切にしていることがあります。
日頃の診察においてはまず第一に念頭に置いているのはシンプルかつ継続的なデータ収集です。続ければ続けるほど、その人の後ろになにか隠れている迫りくるリスクや病気を探知する可能性が高まってくるようなデータです。
なんだか物凄い金のかかる検査データなのか?と思われそうですが、全く去にあらず。
実際に高齢者の疾病の検知に使っているものの中で、どんなに忙しくても診察室内で計ったり記録するバイタルとしては体重、血圧、下腿の浮腫の程度、舌の乾燥具合、脈の不整、排便・排尿の間隔と量・性状、SpO2、睡眠の性状等です。
勿論、聴診などもしますがそれは疾患が潜んでいない限りは日常ではあんまり変わらないことが多いです。血液のデータは一度採血しておかしくなければ、その人の年齢やバイタルに合わせて3ヶ月から6ヶ月の間隔で採取していくことにしています。胸の写真と心電図は最低年一回。
こういう数値データで大切なのは「収集の継続性と各種データのコンビネーション」。実際に、これらの「変化」を見つめることで「何かがおかしい」という赤色灯が回りはじめてそれがもとになって数カ月後とかに確定診断されることになる疾病を初期の段階で見つけることが何度もありました。(とはいってもそれこそが診断学の要諦の一つだと思うんですけど。)
これらのバイタルを活かすもう一つの大切なデータは患者さんのしてくれるお話。日頃の調子、周りの人との関係、日常の運動量、過去の病気の話や職業歴、諸々の雑多な生活歴、飲酒、喫煙、結婚と子育ての話、井戸水での生活をしていたか否か、御両親や兄弟、親族等の病気の話、出身地、長い間過ごした生活地等の四方山話の中から実はその人の現在や未来に確率的になりやすそうな疾患をかなりのレベルで予測する素晴らしいデータベース。
血液データや画像データは確かに神の目を提供する診断の要ではありますが、診察室の中だけでも本当にいろいろと病気が推測できることを皆様も御理解ください。というわけで、診察されるお医者さんにもし質問を受けたら可能な範囲で結構ですからお話してあげてくださいね!:-)
そう考えると、逆にお医者さんというのは患者さんからいろいろな話を気軽に「聞き出す力」も大変に重要なのです。
しかし大学病院みたいな医師が殺人的に忙しいところでは四方山話まで沢山話す患者さんは逆に煙たがられます!間違いなく。多分。w
そういうわけで、大学病院や三次救急レベルの病院はまず市井の病院で紹介状を書いてもらえるようにして行くといい理由がここにあるわけです。高度な治療を要する病院に行くまでに既に色々と前医達の推測や診断、個人のデータがかき集められているわけですから、先生の時間も節約でき、より専門性を発揮することが出来るわけです!
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