2025年3月28日金曜日

樹木希林はやっぱり怪優

たまたまですが、当直中にアマゾン・プライムのsuggestで出てきた映画「あん」を観ました。

樹木希林の出る映画、宮本信子の出て来る映画に決して外れが無いというのが、私にとっての一つの確信になっているのですが、今回の映画もやはりソレでした。

今回はネタバレとなりますが、物語の筋は過去に「訳あって」どら焼き屋で雇われている男(永瀬正敏)の冴えないどら焼き売りから始まります。そこは学校帰りの女子学生や帰りがけのちょっとしたおやつ程度の買い物客が寄る程度。作っている本人もそれほど美味しくないという事は百も承知なんですが、流れていく日々の中で取り敢えず生業として仕事をしています。

そこにやって来たのが樹木希林演ずる通りがかりのお婆さん。お婆さん、実はここで仕事をする事、特に餡を作るという部分に興味津々なんですが、ある事情からバイトの応募は何故か控えめ。時給600円だからといって断る雇われ店主の男に食い下がり、300円でも200円でもと言い寄る老婆だったのですが、それでも断っていました。

しかし、ある時そのろうっばが作って来たタッパーウェアの餡を食べて態度一変。男の側から頭を下げて働いてもらう事に。その結果次第に客が店の前に列を成すようになり、やがては開店直後にもう並んでいるような状況に。

ところが、このお婆さんには手の変形、障害がありました。そのことを調べたある人物からお婆さんに関する「語られていなかった過去の事実」が判明したのでした。それはお婆さんがハンセン病(癩病)患者であったという事実。

そこにハンセン病に対する迷信塗れの、時代に全くそぐわない考えに憑りつかれた店のオーナーの馬鹿嫁が絡みついて来るという話。

それが周囲に漏れた途端、客はぱったりと店に来なくなりそれが己の存在によると理解したお婆さんは静かに身を引き、この雇われ店長である男に手紙を認めるのですが…。

私はこの映画を観ていて本当に涙が出て来ました。実際に日本でも国家権力の手によって犯罪が行われ、人として扱われず、日本の各地でその幼少期から死ぬまでその隔離され逃れる事のない施設で家族・親族からも忘れられたように一生を過ごしてきた無数の人々の存在を知っていればこそ、画面を観ていて義憤で血がたぎる思いでした。

今の日本では数年に1人ハンセン病患者が見いだされるか否かという程にまでコントロールされる程度にまで減少しています。しかも、ハンセン病というのは成人同士ではほぼうつらない疾病であり、完全に治療可能な各種の抗生物質が揃っている感染症。

医師会も犯罪を犯した主犯の一人で、声高に国家を責めることは出来ないのです。決してあってはならない感染による人の差別。今も人の心の中に残る疾病、障害への根強い差別をこういう形で改めて観る事は大切な事。

人には教育が必要。正しい教育の先に人と動物を分ける成長があるのだと思います。

是非、子供から大人まで皆さんに観て頂きたい映画だと思います。


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