脳腸相関と言われるくらい頭と腸管というのは興味深い相互作用・・・というかシンクロナイズした動きを見せます。腸管でドパミン、ノルアド、セロトニン等も相当な割合が作られますしそれらを感知する受容体も腸管には無数に分布しています。
結果として、当然の様に脳味噌という組織が感知する事を腸管も感知するような協調性がある訳でして、緊張すると脳内の信号がある一定の方向に動くだけでなくそのホルモンの働きなども腹がグルグル鳴ったり過剰な動きが過剰な蠕動や収縮などという形で人によっては「腹が痛い」という感じで感知されることになります。また、その延長上には下痢という形で緊張やストレスの表現型が示される人もいる訳です。
ところが、精神科の患者さんに使われる薬の多くはどの信号伝達経路を刺激・抑制するにしてもこれらの薬が精神に影響を及ぼすという事は間接的にであれ直接的にであれこれらの腸管の運動を抑制したり亢進させたりすることになる訳です。
なかでも、統合失調症や躁病の治療においては結果として腸管の運動を抑制する結果を生み出すことになってしまう事が多くなり、通常では問題にならに様な比較的若年者であっても便秘に悩まされる事が多くなってきます。これが長期治療者においては更に中年・老年となってくると長きに亘る腸管抑制によって便が滞留を続け、腸管からの内圧が更新して巨大な大腸がほぼ拡張したまま便が通過した後も形を変えない状態でエアだけ入っているなんて事もあります。
消化器外科の先生に伺った所、このような方の腸管というのはイレウスの緊急オペなどで開腹してみると、物理的にペラペラの状態で、正直「これじゃあ動かないのも当たり前だわ」と思えるような形態なのだそうです。
このような状態の患者さんを精神科のドクターも通常は非常に気にかけておられる方が普通で、積極的に排便を促すような措置を投薬を中心にとっていますが、時にイレウスという状況に陥って命の危険に晒される患者さんも出てくるのです。
危なくなりそうな時に我々にコンサルが入る事もしばしばなのですが、多くは院内で何とかマネージできますが、大学に送って消化器外科のお世話になるレベルの状況に陥っている方が無いということはありません。
精神の治療と消化管の問題。本当に厄介な問題ですが、生物にとっては当たり前の連関。それでも治療者側にとっては深刻で長い歴史を持った問題であることに変わりはないのです。
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