2023年2月20日月曜日

妄想性障害

私の勤める病院では内科で患者さんを診ていると認知機能障害だけでなく、ごく普通に種々の「その他」の精神障害を持っている患者さんが居ることに気づきます。

施設入所者の方が多いので、付添いの施設の看護師さんが一緒に来てくださってその患者さんの病状説明とか認知能力等の説明とともに、施設における患者さん自身の日々の過ごし方のお話も伺うことが出来ます。

患者さん自身は私に多くのことを気兼ねなく話してくれていろいろと楽しいお話も多いのですが、実際は私に深刻な顔をして「個人的な問題や困りごと」を私に話しかける、と言うか話し込むお婆さんが実に多いのです。何故かお爺さんはこういった事を打ち明けてくる人はほぼ居なくて私の場合はほぼお婆さん限定です。何でなんでしょうか。

まあ、取り敢えず私限定の事実として彼女達から伺ったお話をすれば、その打ち明け話の中身はかなり突拍子もないものが多くて「夜中にぴかぴか光るライトを持った若い男が私にのしかかってくるんです」とか、「一晩中私の部屋の隣で男が競馬中継かなんかのテレビを見て騒いでいるんです」とか、「夜に隣の部屋から男が夜這いしてきて私の布団の中に入り込んできます」とか被害系のお話が多いのでした。

診察室の椅子のテーブル前に座る患者さんの後ろに立っている看護師さんが患者さんの見えないところで、大きく頭(かぶり)を振ったり、手を前方で払うジェスチャーで「ちがうちがう」と笑っている事があります。

診察が終わって、付添いの看護師さん達が「先生、そもそも部屋の隣には今、入居者は居ません」「男性が居るって言っているあのお婆さん、一晩中念仏を唱えて声が枯れちゃってるんですよ」とか興味深いお話をしてくれます。

精神科の先生の介入を経て嘘のように妄想の症状が消えてしまう人もいれば、なかなか効果のない人も居て次第に認知症状が進んでくる人も。前頭側頭葉型の認知症の人の中に結構幻視などを訴える人が多いのですが、年令によってはそういった症状の一端なのかもしれませんね。

実際のところ、年令を問わず妄想性障害の人は沢山いるらしいのですが、私自身の環境的にはお年寄りがたくさん診察室に来るので、そういった方々での妄想症状を診察することが多いのでしょう。しかし、若い頃から「種々の妄想」に縛られて他人を疑い心から人を信じられないとか、能の機能異常で種々のおかしな妄想が湧き出るような人がいるのだとしたらなんとも気の毒としか言いようがありません。

精神科医ではないので、経験していない妄想性障害の患者さんのお話をすることは出来ませんが、やはり遺伝的な素因だけでなく育てられた環境とかも影響あのでしょうかね?投薬治療が効くのであればそれはそれで良いのでしょうが、認知療法などを導入しないと恐らくす簡単には効果は出ないんでしょうね。

人の心は表も裏も複雑です。


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