やばい発言を堂々と言うのはさすがに国のために命をかける軍人らしい行いです。
私は正直今回のロシアの「全ロシア将校の会」のレオニード・イワショフ退役大将の発言はまさに己の命などどうでもいいという、当にロシアの長期的な国益に沿った世界観をもつ正しい地政学的解釈をロシア人側が見せるとどういうものになるのかというのをまざまざと見せつけられました。ロシア人の最後の良心の吐露ですね。
その全文はまさにロシアの良心そのものだと思いますので、リンクが消される前に以下に貼り付けて自分用に記録しておこうと思います。ANNの元モスクワ支局長・武隈喜一死の手になる翻訳整理版です。
◆ 歴史上「経験したことのない」危機的状況
軍事行動というものは、個々の戦闘を組み立てる「戦術」の面では、現場の部隊が見事な働きをして成功を収めることもありうる。 しかし、上層部で大局的な「戦略」を立てる時、間違った決定が下されると、どんなに現場が奮闘しようが、作戦は失敗し兵士の勇敢な戦いも無に帰してしまう。 戦争全体の勝利を最終目標とした正しい戦略が用いられれば、部隊が戦闘で負けても、全体として破局的な敗北に至ることはない。 英米や中国では、そうした「戦略」の研究が行われているのだが、ロシアの上層部ではおろそかにされている。 大局的な戦略というものは、対立する他国との関係のなかで自国の最大限の利害を探る「地政学」的に、どんな結果をもたらすかを精査したうえで決定されなければならないのだが、ロシア軍ではその研究が行われていない。スペシャリストはいるが、軍に登用されることはない。 今回の特別軍事作戦では、初期の段階で戦略的な間違いがあったため、兵士はよく戦っているが、作戦は滞っている。ウクライナ領土のいくばくかは獲得できるかもしれないが、地政学的にはすでに敗北を喫した。 われわれが直面しているのは、ロシアの歴史上、これまで経験したことのない危機的な状況なのだ。
◆ 欧米の長年の“夢”を実現させてしまった「特別軍事作戦」
地政学的に間違った選択をすると、戦略も間違えることになり失敗する。そうなると現場でのせっかくの成果もゼロになる。これが戦争の本質だ。 アメリカや欧州各国は、NATOの元で団結し、「ひとつの拳」となってロシアを叩きのめすことを長い間、望んでいた。EUもロシアの石炭産業を締め出したかったのだが、結局今回、貿易そのものを止めることになった。 以前アメリカは、ドイツとそれに続いていくつかの国がロシアと軍事協力体制を組むことを何よりも恐れていた。 私が現役だった1990年代、ユーゴ空爆の1998年までは、ロシア軍とドイツ軍との間には62の合同イベントがあり、合同軍事演習も行われ、軍事装備の協力もあった。米軍との合同イベントは8つだけだった。 アメリカの軍人は私に不平を言ったが、「ロシアとドイツは地理的にも近く、合同イベントは対テロ対策で必要だ。アメリカは遠い」と言い返したものだ。ドイツのコール首相やシュレーダー首相の頃、アメリカは気が気でなかったはずだ。 それがいまやアメリカと欧州の対立は解消され、アメリカは自らの原理原則のもとに、経済制裁だけでなく、反ロシア、ウクライナ支持という旗の下に、すべての欧州の国々を結集させてしまった。 アメリカがやりたかったことは、19世紀のドイツ帝国宰相ビスマルクが望んだように、ウクライナをロシアから切り離しさえすれば、ロシアに勝てる、ということだった。 1948年8月にアメリカの安全保障会議がまとめた「米国の対ソ戦略」の中で、軍事戦略とならんで中央アジアやコーカサス、バルト3国に対する対応が書かれているが、ウクライナについては特に重点が置かれている。 そこには、ウクライナ人とロシア人を分けることは困難だ、彼らは一つの民族である、それゆえに亀裂を作り出す必要がある、さらにこの亀裂を政治的対立や軍事紛争にまで拡大する必要がある――と書かれていた。 まさに今、このアメリカの思惑が実現している。 ブレジンスキー(アメリカの政治学者、元大統領補佐官)が言っていたように、「ロシアはウクライナがあって初めて世界の大国であり、ウクライナを欠いたロシアはただのアジアの一国家にすぎない」のだ。 英米両国にとっては、中央アジアもコーカサスもロシアからもぎ離し、ロシアを孤立させる、というのが19世紀末以来の構想だった。 こうした長年の夢を今回の「特別軍事作戦」は実現させてしまった。
◆スターリンの時代にもなかった「歴史的孤立」
たとえキエフ(キーウ)を奪取しても、われわれは世界で孤立している。 国連で誰がロシアに賛成票を投じてくれるというのか。中国さえ棄権している。CIS諸国(旧ソ連の国々)も、反ロシアの経済制裁に加わっていくだろう。残るのはベラルーシだけだ。 ロシアがこんなに孤立したことはなかった。 スターリンが第二次大戦直前にやったことを思い返してみればわかる。 戦争の匂いをかぎ取ったスターリンは、英米というアングロサクソンの大国をさえソ連の側に引き寄せた。 日本との関係には問題があった。しかし1941年春、日本の外務大臣(松岡洋右)がモスクワを訪問した時、スターリンは自ら4度も会い、出発の際には、未曾有なことだが、スターリンが駅頭で見送ったのだ。外務大臣をスターリン自身が見送りにきた唯一の例だ。そして日本と中立条約を結んだ。 つまり東と西で安全保障環境を整えたわけだ。 1941年6月、ナチスドイツが電撃作戦を開始した当初は困難な立場に置かれたが、スターリンは英米がソ連支持を表明することを確信していた。日本も動かなかった。その間、ソ連は日本に対する軍備を整え、蒋介石の国民党にも中国共産党にも援助をして日本をがんじがらめにした。 ところが現在、われわれは裸のままだ。
◆ロシアは情報戦争でも「完全に敗北した」
われわれは何をすべきだろうか。どんな戦争でも勝利するのは知性だ。 ハリコフを取ろうが、たとえ沿ドニエストル地方を奪って戦闘に勝利しようが、対立する他国との関係のなかで自国の最大の利害を探るという「地政学的な」戦争では敗北した。 現代の世界には不正や暴力があふれているが、しかしロシアはこのひどい世界の中でも最悪の状態に置かれることになるだろう。 この70年でロシアは、特に技術と社会状態は最悪の状態に落ちる。1937年の大粛清のような抑圧がある。「勝利勝利!」と叫ばされ、「戦争反対」と言っただけで投獄されるような法律はスターリンの時代にもニコライ二世の時代にもなかった。 大統領は知恵と経験のある者たちを集めて虚心に意見を聞くべきだ。 地政学的な俯瞰図を描き、民衆の心理を示し、社会の極端な階層化、矛盾について論じる必要がある。経済の状況と見通し、安全保障の現状などの客観的分析が必要だ。 そして第二に、この状況からどう脱出するかという具体的プランを立てることだ。 いろいろな意見が出るだろう。その中から指導者がプランを決め、そのプランに基づいてプロフェッショナルを集める。ふんぞりかえって大声を出すだけで何の役にも立たない者ではなく、役に立つ専門家を集めて、世界におけるロシアの位置を話し合う。 ロシア大統領に電話しようという指導者がこの世界のどこにもいない状況だ。大統領は謝罪し、処罰すべき者を罷免し、政府のトップには「特別軍事作戦」に反対する者を据えることだ。 大統領も詫びるのだ。 いま世界中の国でロシア人は大変困難な立場に置かれている。ロシア語を話しただけでいじめられたり殴られたりしている。 われわれは情報戦争に完全に負けたのだ。 ウクライナではロシア軍は花束を持って歓迎されるとか、儀礼用の軍服をした兵が出迎えてくれる、などという誤った情報が上層部まで届いていたのだから。ロシアの戦車は最強だなどと言って敵を侮って過小評価するのは最悪だ。
◆ ショイグ国防相は軍事の素人…「プロが必要だ」
ウクライナ軍はこの20年、ことに2014年以降、プロの軍人に率いられてきた。国防相が文官の場合でも、参謀総長にはすぐれた将軍が抜擢されてきた。 ロシアではこの20年間プロの国防相は一人もいない。 欧米諸国では国防相に文民が就いているというが、西側とロシアとではまったく事情が異なる。西欧諸国では選挙で勝った与党から国防相が出ることが多いが、これはシビリアンコントロールで、軍機構の再編や国防予算の獲得などに奔走する。 だがロシアでは国防相は最高司令官だ。軍の戦闘準備態勢も決める。素人がその職について、自己PRとしか思えない演習実施を命令するような国はロシアくらいだ。 ショイグ国防相は軍事には素人だ。国防第一次官のルスラン・ツァリコフも軍務の素人なのに階級は将軍だ。 しかも参謀総長には一流とはほど遠い軍人がついている(2012年からワレリー・ゲラシモフ)。アメリカの統合参謀本部議長は実質的な軍のトップだ。しかし現在のロシアは参謀本部もプロを遠さげている。 いまロシアにはプロフェッショナリズムが必要なのだ。最高の愛国主義者は、テレビでプーチンの腰巾着ぶりを見せる者ではなく、プロの軍人だ。軍人と言う職業を愛し、民衆を思う者こそが最高の愛国者だ。 今日ロシアに必要なのはそういう人間だ。」
もうこれ以上書くことがなにかあるでしょうか?現政権のほぼ全てと現在の将軍達をバカプーチンとまとめてナマス切りです。退役軍人の団体を敵に回したプーチンに未来などあるわけがありません。所詮プーチンなんて戦争のど素人であるKGBの小物。戦術で勝っても戦略では大敗です。(以前までと違い、今回の侵略では戦略でも勝ちは無さそうですが!)策士策におぼれるとはこの事です。w
解っている人は解っている。それだけです。この人が「不慮の事故」や「自殺」と言う呼び名の死亡とならないことを切に祈るものです。プーチン亡き後にはこの人の事はWikipediaや戦争博物館に永遠に記録として残ることでしょう。偽物と本物のは命を賭けた場面でこそギラギラに輝く差となるものですね。
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