2016年1月3日日曜日

キーン先生

今年いの一番に買った本はドナルド・キーン「わたしの日本語修行」(白水社)です。

今までドナルド・キーン先生のお話を色々なメディアで断片的に、しかし深甚なる興味を抱いて読ませていただいてはおりましたが、先生ほどの日本語・日本学の泰斗がアメリカ海軍日本語学校と言うところから出てきたというところにいつも密かなしかし深い疑問を抱いておりました。

しかし、この本はまさに今までのわたしの数十年の疑問というものを河路さんという東京外国語大の先生の力で、間接的ではあるものの一気呵成に開陳して貰えたような謎解きの本でした。
キーン先生の日本と日本語の古典に関する造詣の「恐るべき深さと鋭さ」を事ある毎に見せつけられてきた愚か者にとってはそう言った先生が育った歴史の雛形はどういったものであったかという舞台裏を「解説付きのツアー」でめぐることが出来たような幸せな時間を過ごすことが出来た新年の読書でした。

中の文章の「断片的な事実」は今までに見聞きして知ってはいても、先生の日本語学習の全体像がどうなっていたのかを時系列で知る機会はありませんでしたので、この出版不況の時代にこのような本を出してくださった白水社の英断には感謝してもしきれない思いです。

歴史的な流れの上で語られる日本人の思考と日本文化というものを世界に紹介していただく上での大切な橋渡し役として「この先生をおいて他に無し」というキーン先生が日本に帰化して、日本人としてその骨を日本に埋めてくださるという選択を感動無くして聞けなかったちょっと前の私です。

内容は敢えて書きませんが、皆様も是非一度お手に取られて「泰斗」の才能と努力の結実の背景を堪能されてください。
人が才能を開花させる時に起こる幸運な出会いとは何かという一例をここに見せつけられるました。

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