2016年1月13日水曜日

高齢者の"オクスリ"依存

薬への依存というと若い兄ちゃんネーチャンの"ヤク中"、ヤクザの周辺の薬漬けの連中なんていうのを想像しがちですが、日本で最大の規模を誇るヤク中は日本の病院好きの高齢者だと私は思います。

多分間違い無く「不要な薬」の処方量のトータルは国家予算の中における支出の中である程度のパーセントを占めてくるのではないかと推測します。
資料によれば平成25年度の国民医療費約40兆円の中で、薬局調剤費用に占めるのが17%と出ています。勿論入院医療費、入院外医療費のなかにも病棟などで使用した薬の数字が入り込んでいるでしょうから、この調剤処方非以外にも少しは薬の使用が含まれてはいるのでしょうが、この調剤処方の中のどれ だけが高齢者に使用されているかも考えなくてはなりません。

資料をみると、40兆円の中で65歳以上を高齢者と捉えると23兆円!ほどがその年齢層の治療に使用されているのが今の日本の現状です。歳が上がれば当然のごとく健康を維持するの当然のごとく物理的に無理になって来ますからこうやってお金がかかってくるというのはまあ、統計学的にももっともな話なのですがそう言った「当然そうなっちゃう」と言う事実とは別に、臨床に戻ってからは、個人的に「一部高齢者の薬好き」を痛感するのです。

外来には沢山のお年寄りがやってくるのですが、循環器系の薬なんかは専門性が高い薬なので、まだまだ"あちら"のリクエストは少ないかな?と思える水準ですが、便秘、睡眠、節々の痛みといった具体的な症状に対する種々の投薬リクエストを出してくる「一部」高齢者患者の中には常軌を逸したと思われる具体的な投薬のリクエストが「よく」見受けられます。

湿布の処方なんてその中でも最もわかりやすいもので、これは入院患者さんにも散見されるのですが、ほんの数日で一袋七枚入りの湿布を10パックも消費してしまう人がいたりします。(多くの場合転入院直前に他院から処方された超大量の退院時処方の持ち込み)
見ていると本当に魚のウロコのように痛いエリアの周辺に貼っていたりしてね・・・。そりゃ、数日で足りんくなりますわな〜。

特に認知が入っていないような人でも、眠剤などを個人病院から貰ってきている人などではいわゆる「依存性」の強いベンゾジアゾピン系の中でもかなり強い部類に入るものを二剤、三剤と処方されているのを持ってきて「これと同じやつじゃないと眠れん」とか言って当方をかなり困らせる人が散見されます。
ピンクの三角のやつとか、白の長い粒とか私にそんなこと言ってもその薬がなんかなんて知らんですし。w

少なくとも現代の普通の医師は、可能であれば最小の投与で最適の効果を狙っていくという良心を持って処方しているはずですから、この手の薬依存の強い患者さんの言うところの「沢山薬をくれる良い先生」になるには、良心を殺していくか患者の言いなりになることで副作用による患者の健康などガン無視して処方してあげるかという負の選択しか残されていないような気がしますね。そしてそうしている医師がいるということなのでしょうか。

「たくさん薬を出す医者=良いお医者さん」という図式を頭に刷り込まれた高齢者達を量産した過去の話を今の若い人たちには決して再現させてはいけないと強い決意で臨む日々です。
(というわけで、高齢者で薬依存の強い大量の薬を持参する人に対しては意を尽くし、時間をかけてナゼその薬が必要ないのかとことん説明して枝葉を落とす毎度毎度の外来の日々でした。)

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