2025年11月1日土曜日

医学部志望とか大丈夫か?

 最近良く聞く「直美」という言葉を御存じでしょうか。

保険診療の世界ではない自由診療の世界である美容整形外科に若い時にそのまま直に飛び込んでいく皆さんの事。何とも恐ろしい事で、一般内科の知識は勿論その他の医学関連の知識に関しても医師国家試験レベルのものしか知らずに美容整形外科医として「カネ」を得るためにその租界に飛び込んで行く訳です。

実は今、この現象が医者の間では結構な話題になっているんですが、これはもうこれは生き方、哲学の問題であって、(私立卒の皆さまが多そうなんですが)その他の若手でもこの直美で生きていこうとする人間が増えているという話なんですね。消えゆく命を直接救う事、悩める症状を何とか救おうというような今迄の医師の標準的な印象とは全く関係ない世界の話です。

我々の研修医の頃の美容整形外科に対する印象は正直言って「アッチの世界」の人達という感じで、同じ医師としては認めないみたいな感覚があったのですが、彼らの得るモノは勿論物質的御利益。それを我々保険医側は「武士は食わねど」風に眺めていた訳です。

ところが、財務省の主導する医療費抑制の世界が病院を潰していく方向に明確に舵を切った事で一般に「医師」と呼ばれる保険医の世界が音を立てて崩れ始めているというかなり明確な事実が目の前に出現し始めた事で、一般の非医療界の人達の目に見えないところで色々なものが大きく変わり始めています。

実は、日本人の「個人の頑張りで人的不足の空いた穴を埋める」という何時もの悪いパターンでこれらの崩壊部分が支えられてきた訳ですが、そういった世界に見切りをつけているのが哲学など関係なく医師国家試験を乗り越える事だけに特化して努力した直美の皆さま皆さま。

彼らの未来などというものがどうなろうと我々の知ったことでは無いのですが、医学部に合格する事を至上命題であるかのように送り込んできた愚かな私立高校の進学指導の成れの果てが今の歪んだ若手医師の世界観を作り上げているのかと思えば、崩壊した後の世界を財務省の皆さまがどのように眺め、政治家と共に非難の嵐に晒されるのかはこれから先の話です。

荒涼とした医療の世界。実はそんなに先の未来では無いのですが、まあその頃は自分自身は引退してますけどいざ自分が治療される側になったらどうなっちゃうんでしょうかね。直美に頼む事など何もありませんが。


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