一か月ほど前、仕事中に気分が悪いと言って私の内科外来に来られた師長さんがおられたのですが、バイタルをとったところ異様に高い血圧が測定されました。いわゆる医学的には高血圧緊急症というレベル。
注射を投与して適正血圧迄降圧しつつ画像検査を入れてみると心血管の壁に通常はみる事の無い様な異様な肥厚と変性が起こっているのみならず、腹部大動脈に解離まで見つかりました。この時点で三次救急である大学に搬送する事を決定しました。
御本人に状況を手短に説明をしたものの、イマイチ自分がそのような重篤な状態である事への認識が薄かったため御家族への説明を入れる為に電話。この時点で大学病院への診療情報提供書を仕上げて画像のCD-ROMを作成して救急車を呼びました。
受け容れて下さった大学病院の方も最終的な診断には難渋されたようですが、その後に間接的に病名を知ったところ大動脈炎とのことで、集中的なステロイドによる加療と状態安定化後の大動脈解離への血管置換術が待っている状態となりました。
ところが、この後不測の事態が血管内に発生したことまでは知っているのですが、取り敢えず一旦家庭へ戻って状態が安定化してから手術をという事で自宅で待機されている時に不測の事態が起きた様でした。私の勤務していた病棟にも息子さんと揃って一時退院の御挨拶に来られたのに…。
物凄く腰の据わった根性のある師長さんで、私とはいつもざっくばらんに馬鹿話をする仲でした。
通夜に参加させて頂きましたが、私には哀しみよりも喪失感と強い憤りの方が残りました。あんなに強そうで、蹴ろうが叩こうがビクともしないような強い姉御肌の師長が何の別れの挨拶も無しに先立っていく事などあって良いのかと。
遺された子供さんやお孫さん達の事を思うと本当に何というか言葉もありませんでした。
恐らく苦しみや痛みも無い現世からの旅立ちだったのだろうと思いたいのですが、やっぱり寂しいの一言です。あのガハハという豪快な笑いと明るい笑顔を忘れる事は私の人生が終わる日まで無いでしょう。
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