それが訪問診療の仕事をしていることでの最大の喜びだと感じています。実際には訪問診療というのはどんな事をするのかというイメージが湧かない方も沢山おられると思いますし、そんな事とは無縁のままその一生を終えられればそれはそれで素晴らしいいことです。
しかしながら、今の時代入院して病院で最期を看取らない、もしくは家で家族の手助けや訪問看護師の手を借りながら種々の障害を乗り切る形で人生の荒波を超え、そのエンディングまで積極的に向かって行こうという方は日本中に沢山おられます。
そういう方々が家で頑張っているところへ診察・診療に出向いてカルテへの記載や処方を行うのが訪問診療。高齢者が多いが故に時にはお看取りの確認になったり、脱水その他の緊急事態から入院手続きに飛んでいったりなどということをすることもままあります。
そういう大変さもあり、病院の中で入院患者さんを加療したりするのとは違って道具や薬を直ちに供給することもできず、場合によっては他院への紹介搬送となることも多いことから医師としては手足を縛られた世界での医療行為のような状況になってしまいますので、合わない先生はあっという間にその仕事から離れていく方もおられます。
私の場合は週一回の外の仕事としての訪問診療であって、それ以外の日は外来や病棟における日常の診療は自分で行えますので、そういった意味では医師としてのフラストレーションは溜まりません。
ですから、外に仕事に行く日というのは私にとって患者さんとそのご家族との出会いが出来る日でして、幸いにして患者さんやそのご家族が私の到着を心待ちにしていることが多い状況が続いておりますので、ニッコリ笑ってくれたりどこまでも見送ってくださる高齢の患者さんをみているとこちらが癒やされますね。
それでもそういった方々の年齢の最頻値は九十前後。年単位で診療していく中でお見送りさせて頂くことになる方も当然ですが数多くおられます。この前も指を折って数えてみましたが、この数年間の私の診療の期間中でもそうやってこの世を去られた方々が20では足りませんでした。
その方々やその方々を囲んでおられたご家族、ご親族のお顔が未だに鮮明に脳裏に浮かび上がってきます。ご家族からかけられた最後の過分の感謝の言葉を思い出す度にこの仕事も悪くないなと思うのでした。
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