2024年11月14日木曜日

精神科の患者さんの治療

内科や外科と違って精神科の治療は一種独特の難しさがあると強く思います。

そもそも診断が医師によっていろいろ異なるのを日常目の当たりにします。何というかいわゆるポンコツレベルの医師も名医も一見すると同じような診断を下すこともあれば、全く異なる診断を下すことも当然あるのですが、果たしてどちらの診断があっているのか?内科や外科の診断の様に画像や数値による客観的な指標に欠けるのが最も悩ましいところ。

更には治療にあたっては一見表面的には同じように見える病態であっても中身は全く異なる事があるのが内科や外科以上にあって、精神に影響を及ぼす要素が細胞表面のレセプターレベルの検討から始まるにしても、それが及ぼす要因の広範さは実に多岐にわたるため、どの薬を使用するのが良いのか、結局は経験則に基づく観察とその対応によるものが中心の様にしか思えないからです。

問診を詳しく行ってその患者さんの状態を把握するのは内科も一緒ですが、内容のおかしさや病院での診察に至る迄の生活歴やイベントの問題を詳細に検討分析してそれを統合する過程は「本当は」最高級の頭脳を必要とするのではないかと思うんです。

ところが精神科医の実態はまさに玉石混交で、他の科に属していたけれども結局のところモノにならなくて精神科に転科してきたという人がゾロゾロ。あと、歳とって体を使わない科を選んでおこうという事で初期投資をたくさん必要としない「駅前お気軽クリニック」の開業という選択で仕事している人も残念ながら混じっているのでした。

結局、もとより知的レベルの高い人で症状の詳細を素早くきめ細かく分類出来た上で、正しい方向性をもって投薬を行っていけるハイレベルの精神科医は実際にはかなり絞られてくると感じています。

治療結果も日常生活への戻り具合や精神状態の評価などである程度はスコア化出来はしますが、所詮内科や外科の様に数値化が出来ない点ではなかなかその治療のレベルをスコア化しづらいのも事実だと思います。

その上、精神状態が多種多様な患者さんを家族さんが納得できるような状態で共に治療できるという高みに居る先生は更に絞られてしまうと私は個人的に思っています。

こういう精神科における治療の日常を真横で見る機会が多い私にとっては、精神科医になるというのは「なる事自体」はそれほど壁は高く無くとも、なった後の責任と信頼を患者さんと共に築けるレベルの医師と評価されるのは恐ろしく困難な事だなと思うのでした。

という訳でワタシには精神科医はとても務まりません。w

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