2025年6月18日水曜日

患者さんとその家族さんへの説明

最近は内科病棟の受け持ち医として医師への患者割り振りをかなり偏って行っています。

方法は何の変哲もないくらいシンプルで、患者さんと患者家族に治療の論理的な説明を「行わない・行えない」医師は外していく方向に、また患者さんや家族さんとのコミュニケーション能力の低い医師は外す方向にもっていっています。

理由は余計なトラブルを起こしたくないという事に尽きます。ある医師の患者家族への説明を聞いていて背筋が寒くなるような事が何回か観察された後、実際にその家族さん達からその医師に対する個別の不満が噴出してきた事を経験した為、このような状況が続けば必ず近いうちに大きな問題に遭遇する高い可能性を感じたからでした。

内科の統括責任者としてはそういう高いリスクを内包した医師はなるべくレベルの高い事はさせず、いわゆる雑務に近い事に集中してもらう様に仕向けています。喋る事が下手でも何らかの技術がグッと高かったり、特別な資格があったりというのならまた話も別なのでしょうが、実際はそういう意味でも残念なレベルである事が殆ど。どうしてなんでしょうね。

ついでに記せば、新しい知識に関して勉強しない人と同じミスを繰り返す人もやはり御遠慮願う方向で物事を進めています。また、一部の看護師の話を「頭から信じて」自分で観察をしない人等はこれまた駄目です。実際の患者さんの診察は数字以上に雄弁に患者さんの状態を判断する為の貴重な材料。看護師の報告を参考にしたうえで、幾つもの可能性を検討しつつ実際に診察を行う事こそが医師の仕事です。これらに止まらず、更には患者さんの症状の経過、病歴、家族歴、職歴等を手際よく詳細に聞き出せないと判断に大きな支障をきたす事はまともな医師なら誰でも容易に理解できる事です。

コミュニケーション、観察、診察、そしてデータ解析。それをもとに再度診察を行いながら投薬・加療を根拠をもって患者さんに説明し、その上で何度も患者さんや家族さんへのフィードバックを行ってこそ加療は進み、退院時には患者さんや家族さんから感謝されようというもの。

AIがこれほどまでに高度の判断を行い様々なレベルで医療に介入してきている21世紀初頭の今、コミュニケーションを取れない医師は恐らく失業する可能性が出てきているのではないかと物凄く強く思うのです。

己がその一人にならないで済むよう日々研鑽を続けたいものです。

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