2025年1月11日土曜日

酒に溺れる人達

文字通り「溺れる」という言葉が至適でしょうか。

アルコール中毒の患者さん達の事に関しては何度もここで書いてきましたが、残念ながら多くの患者さんは上に書いたような「溺れる」状態から逃げる事が出来ずに亡くなっていく人が本当に沢山います。

つい先日も物凄い肝機能障害で入院して来たある入院患者さんを治療して数値上は落ち着いたものに戻せたのですが、退院して外来通院に切り替えると再びダメになって戻ってくる人も。実際、治療のターニングポイントは肝硬変になっているのか否かが大きな運命の分かれ目。肝硬変が進行し、肝細胞が線維化して来ると今の医学のレベルでは線維化そのものを戻す方法は「一般的な臨床応用」は出来ておりません。

実験屋としては線維化したものを戻す方法と云うのは夢の一つだと思うのですが、線維化したものを元に戻すのは死体を生き返らせるようなもので、実際にはiPS細胞を使った再生医療を進めていった方がなんぼか近道という気がします。

あとは肝移植なんでしょうが、アルコール依存者の移植では元気な肝臓を移植して折角イイ感じになった移植後の患者さんが再び酒の海に溺れて…というパターンを見ますので、やはりこの「依存」の部分を何とかしない事には金と手間と時間だけが無くなって再び死へ向かうだけの話なのです。

患者さんには依存症のサークルを通じての治療やアルコール教育などが積極的に行われていますが、文字通り画餅に終わる事も頻回で、その教育が終わった晩に悪い酒飲みが周りに集まって来て「退院おめでとう!」と乱痴気騒ぎをするパターンも嫌という程見てきました。

こうなると酒の無い世界に連れて行ってやるくらいしか彼らを助ける道は無いのでしょうが、そんな世界は禁酒法時代のアメリカにも有りませんでした。ましてや今の時代、コンビニは24時間近所に開いてますからね。

患者さんと話をしていて空しくなる事は頻回ですが、最近はどしちらかというと牧師さんの気持ちがわかるようになってきました。見送る側の気持ちと言うべきでしょうか…。


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