どうしようもなく繰り返す問答というものがこの世にはあります。
多分それがもっとも頻繁にかつ日々見られるのは病院の認知症病棟ではないでしょうか。
人間も歳を経て八十を過ぎるようになってくると、やはり多くの人にとって”物忘れ”と言うことが増えてきます。もちろん、亡くなられる直前まで本当に恐るべき記憶力と知力を発揮しておられる方も居りますますので、あくまでも”歳に比例して増えてくる”と言うのが正しい表現ですが。
以前、このブログにも書きましたが、本当に亡くなられる直前まで、代表的な二種類の認知症スクリーニングであるMMSEとHDS-Rというテストで何れも満点をとられた上に、過去の出来事を正確に”XX年のY月にZZをした”という風に話をされていたお婆さんも居ました。
勿論、そのような方は例外中の例外ではありますが、そのように能力を保たれる方もいる一方で多くの方は皆”歳相応”に、そして一部の方は実年齢よりも早く認知能力が落ちていきます。
今入院されているおじいさんの一人がどうしても当方が説明したことを直ぐに忘れてしまって、何度同じ説明をしても一時間後にはもう何事もなかったかのように最初のお願いをする為にナース・ステーションに舞い戻ってこられます。
曰く「どうしても役所に行って私の通帳を確認しないといけない用事があるから、今度の月曜日には連れて行ってくれ・・・」と。
その度に、私、ナース、社会課の人間、そしてチャンスのあるときには役所の人間までが説明を入れるのですが、結果は同じ。御本人には”マッタク”悪気はありませんが、さっき話したことは綺麗サッパリ忘れてしまうという事の繰り返しです。
それでもしかし、我々はその度に何度でも繰り返し説明を入れます。そしてその度にそのおじいさんは「あ〜〜〜、そうですか!それはそれはどうも有難うございます。(^^)」と感謝をされます。
ここで怒っては駄目。あたかも話す方も初めて話すかのように話すのがキモで、おじいさんは安心してベッドに戻って行かれます。
医療職にある人間はこういうことを”当たり前”に受け止められないようではなかなか職を全うするのは難しいのではないかと思います。中には本当に気が短い看護師さんがいて、つっけんどんに応対する人もいますので、そういう時は”わざと”その人の前に出て私自身が見本を示すことにしていますが、なかなかそれを理解するだけの能力に欠ける人もいて難しいものです。
まあ、正直な反応といえば正直なのかもしれませんが、医療職ではね・・・。
認知機能の低下は多くの人がやがて行く道。オノレがどう取り扱われたいかを考えれば、応対の方法という意味では自ずとその答えは出るかと思うんですが、答えは各人一様では無さそうです。
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