2016年9月5日月曜日

ドラマのような本当の話

医者として日本で働き始めて未だ二年半ですが、病院というところは本当にドラマが起きるんだなってことがいろいろあります。今日判明したことはその一つ。

実は二月ほど前にいわゆる世間で言うところの記憶喪失で自分の名前や生年月日、過去の記憶とともに失くしてしまわれた高齢の女性が名古屋の中心部にある大きな病院で保護されました。保護された時には飴玉を喉につまらせたことによる一時的な低酸素脳症がきっかけとなってこの女性のその時点より過去の記憶が消失してしまったとのことでした。いわゆる逆行性健忘という症状ですね。

この方は非常に物腰柔らかい方で、丁寧なお話をされるのが印象的な私の受け持ち患者さんの一人だったのですが、この方は推定年齢83歳というふうに”仮の”年齢とともに”仮の”名前が与えられておりました。
前院では詐病の疑いは低そうだ、などという検査結果とともに送られてきた方だったのですが、来院されて以降、この方が淡々と訴えるのは己が誰で、これからどういった未来が待ち受けているのか、という誰もが悩むような事でした。

知能などへの影響はなく、推定年齢に比すればIQも充分保たれている方でした。そこで、彼女をいつも励ましつつ、社会課と相談してベストと思われる施設へと送り出したのですが、その後暫く私の脳裏からは消えていたこの方に関する劇的な情報が今日入ってきたのでした。

それは送り出した施設が提携している病院の先生が送ってくださった一通のFAXでした。

その文面によると・・・「Xさんは入所以降、落ち着いた生活を送っておられましたが、夢のなかでふとある数字が現れてきたというのです。(ただしその番号が何を意味するのかも御本人にはわからない。)その番号をお世話になっている市役所の方にお話したところ、その番号で電話をかけてみられたところ、何とその番号はXさんの弟さんの電話番号だったというのでした。それから先は芋づる式で、直ちに家族に連絡が取られたとのこと。娘さんとお孫さん達との四人で住まわれていたと言うことで、お祖母ちゃんの無事を知った家族は号泣されたとのことでした。その方々のお話ではS県のお墓参りに行かれた後行方がわからなくなっていたとのことです。」

この話をナース・ステーションにとどけたところ、看護師さん達の中には「鳥肌が立った」というような方もおられました。数日前も、ネットのニュースに警察間の認知症等に関わる人々の広域操作情報の共有を進めなければならない、などという記事がありましたが、これなどはまさしくそういうシステムがあればもっと早く見つかっていたのではないかという事例ではなかったでしょうか。

何はともあれ、事実は小説よりも奇なり。

私的に興味が有るのは、御家族と再会されたお婆ちゃんの記憶が戻ったかということですが・・・これは先方のドクターにまたお話を伺ってみたいと思っております。

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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

わあ・・・本当にドラマみたい・・・
お婆さん、弟さんの電話番号を覚えていて(夢に出てきて)良かったですね~
私はどうだろう?と考えてみたら、
ハッキリ覚えているのって自宅、実家、自分と夫のスマホの番号だけでした。
私が年取ったときに頼りになりそうな息子のスマホ番号を覚えなくっちゃ!

small G さんのコメント...

ドラマですよね〜。

私もこんな奇跡を呼び起こす為には10桁か11桁の番号を思い出さねばならぬのかと思うと・・・、orz
ちょっと無理っぽいので、将来は自分の位置がわかる爺さま用のGPS機能付きスマホを身体から肌身離さぬように持っておいて行動しましょうかね。

暗証番号の4桁以上は覚えきれない脳味噌ですので。w