この20年はゴミ屋敷のお話が結構世の中に存在するリアルな社会問題として話題になっていますよね。
私の勤める病院でもとんでもないゴミ屋敷、ウンコ塗れの屋敷などから役所以来で救出されてくる患者さんが居ます。病院に来る時にはまずヘルパーさんや担当看護師さんから直ぐにお風呂に入れられて体を徹底的に綺麗にすることからすべてが始まります。同時に持ち込まれた服などは糞便塗れの事も多いので、それらを綺麗にしてあげることも日常生活を普通に戻すための大切な過程なんです。
さて、このゴミ屋敷に住む人達なんですが、ゴミ屋敷を作るという行為は別に普通の生活を送る方々が想像するような髭を生やして汚い服を着て、酒に飲まれているオッサン風の人達だけの専売特許ではありません。
一見すると滅茶苦茶に清潔な感じを与える美しい人でも「ふつうに」ゴミ屋敷に住んでいるというのが不思議なところ。職業や性別、収入なんかも全く関係なくそういう人達は発生してきます。実はコレらの人々は精神科医の間では精神疾患として取り扱われているんですね。
精神科臨床の現場では複数の精神症状が重なった結果として現れる生活機能障害と捉えられているのが実態です。
そもそも生活空間の荒廃が起きてくるのはうつ病、ADHD、統合失調症、認知症などで出てくる実行機能の低下と考えられておりまして、片付けの段取りが組めない、優先順位がつけられない、行動開始ができないという表現型とみなされています。それには意欲低下 や強迫性障害(OCD)=物を捨てることへの強い不安、判断不能、確認行動も関与していて、不安障害、PTSD も絡まった不安・回避行動 のように、片付けを始めると不安が強くなるため、行動そのものを避けるというような行為の積み重ねの最終的な表現型がゴミ屋敷だと考えられているんですね。
要するにゴミ屋敷化は「怠け」ではなく、脳の機能低下や不安の結果として起こる医学的な現象というのが今の精神医学の考え方なんです。
更に若年層では過重労働・学業・人間関係のストレスのために生活スキルがまだ十分に確立していない、一人暮らしでサポートが少ない、メンタル不調自身への自覚が乏しいという事などが複合要因として存在し、最終的には「片付けられない自分への羞恥心 」が目の前に存在するゴミ屋敷の出現に対する問題解決に対する相談を避けるという状況に陥ってしまって、気づかないままに自分が生きている日常の生活空間が自壊し、とんでもない生活環境が更に精神状態を悪化させるという悪循環に陥るという話。
このループは、本人の意思や努力では断ち切れないことが多いのが特徴で、片付けようとしても身体が動かない、捨てることに強い不安を感じる、風呂・キッチンなどが使えず、生活空間が機能しない、不衛生環境で健康被害が出ている、社会生活(仕事・学業)が破綻し始めている等が重なっていたら疾患の容態に応じて抗うつ薬・抗不安薬・認知行動療法・強迫症治療などが早急に導入されるべきだと考えられています。
要するに当事者の自覚が乏しいまま進行するのがこのゴミ屋敷出現の経過。ゴミ屋敷化は「片付けの問題」ではなくて脳の機能・精神状態・生活環境の複合的な破綻として理解すべき現象だというのが本質的なポイント。
テレビに出てきて笑いながらゴミ屋敷を公開する恥を売り物にする芸能人達がごく普通に居ますが、画面に映されているゴミ屋敷の住人たちは実のところ治療対象の方達なのです。
今日こういう記事を書いたのは、最近ネットで公開されたあるアイドル女性のとんでもないゴミ屋敷に関する記事を見たからで、思わずこういう雑文を書いてしまいました。
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