2017年2月2日木曜日

眠りの話・続き

さて、眠りの話もうちょっとだけ続けます。

昨日も書いたのですが、眠りに関するお話は日常臨床のレベルのことだけでも延々と続けられるのですが、とりあえず今日で一旦切って・・・という形にするために眠りの問題で私達眠りの専門家でない医師が日常出会う患者さんの訴えというのは、ごく簡単にまとめるとおおよそ以下のようになります。

  1. 眠りに入ることが出来ない。
  2. 眠りに入ることは出来るのだけれどもすぐに目が覚めてしまう。
  3. 眠りに入ってそれなりに眠れるのだけど、起きるのが朝の四時前とかで、世間が活動を始める前の時間に悶々と布団の中で過ごさないといけない。

などというものです。

ところが、上に書き出した①から③の問題は内容をよく聞いていくと表面的な訴えとは別に原因が様々に枝分かれしております。例えば①のように眠りに入ることができないと言っている人たちの中には、朝寝やお昼寝をそれこそ”十二分に”取ってしまったために、体が全く疲れていなくて、やたらと遅くまでピンピンと行動してしまって挙句の果てには変な時間に眠くなって、また朝寝昼寝・・・これではらしい時間での入眠は無理ですよね。w

また、②の場合も、”すぐに”と言う訴えも実に幅がひろくて、1時間以内の人もいれば、4時間寝たあとでも”すぐに”と表現される人もおられますので、そこはよく問診を深く進めなければわかりません。また、これが本当に多いのですが「私は寝ていない!」と言う訴えを持たれる方々の実に多くが、看護師が夜に巡回してみるとグーグーと”大いびき”をかいて寝ていました、と言う報告をされることがこれまた普通にあるのです。

実はコレは睡眠時間の問題ではなくて、”入眠感”の問題なんですね。これは実は生理学的な問題とつながっていて、睡眠時無呼吸症候群やそれと関連した睡眠時の突然死、高血圧の問題などと大きく深く繋がっていることもあって、軽視できないことが多いのです。解決策は21世紀の今では数種類あるのですが、このレベルの問題になると大学などの睡眠外来を一度訪ねられて治療をされることが大変重要かつ根本的な治療の第一歩となることが多いのです。

更に、③番の問題では、例えば病院で寝入るのが9時だとすると、朝の四時に起きても既に7時間寝ていることになります。これは高齢者にとってはもうハッキリ言って充分すぎるほどの睡眠時間であることが多く、訴えそのものが”入院というイベント”においては”ごく自然”な出来事であることが多いのです。

しかしそれでも、眠りというものは各個人にとっても様々に定義が違いご本人達の言う所の「普通の眠り・正常な眠り」を一緒になって突き詰めていくことが患者さんの希望を満たす上で大切な話になってきます。ただし、毎回満たせるというわけではありませんが。

不眠を訴える人達にとって”睡眠時間の長さやパターンはかくあるべし!”という誤った思い込みをされている方が多いこともこの問題を複雑にしている要因なんですね。人が生物として生きている限り、人生のおよそ三分の一を占める一大イベントである”睡眠”が我々臨床医の日常から問題として消えることは永遠にないでしょう。

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