認知症もいろいろな表現型がありますが、帰宅願望の強い方で特に記憶がごくごく短時間しか持たない方の対応はかなり大変です。
ベッドにずっと寝ておられる方だとほぼ30秒毎にベッドの脇にあるボタンを押し続けるようなことはごく普通ですが、だからといってそのボタンを患者さんから奪うことは許されていません。
よくニュースになるのはそのボタンを患者さんの枕元から外して全くそれが出来なくなるようにすること。私の知っている限りでは実は結構多くの看護施設で、特に夜間の人手が少ない時にやっているところがあると聞きます。ネットでもそういった事はよく書かれておりますが、本当にあるんでしょうね。
実は、今ある内科病棟に他の先生が担当になっている患者さんで実に可愛らしいおばあちゃんがおられるのですが、そのおばあちゃんが本当に記憶が保持できない。何度でも何度でもほとんど無限ループのように言われることは「法事があるんで帰らんといかんの。先生呼んで。よろしくネ。」というものです。それこそ一分間に数回。
しかし、実に驚くべきはこのおばあちゃんの動きです。
驚くべき健脚の持ち主でして、80になろうかという御年にもかかわらず、先生を探し求めて物凄いスピードで走り回るのです。(しかしどの方が担当の先生かは覚えておられないので、白衣を着た私の方へ来られます。)何というか、良い例えが思い浮かばないのですが、アイドルを見つけたときの熱狂的なファンの駆け寄り方と申しますか。w
この健脚ぶりは凄いなと感心するのですが、実際のところよく考えるとこのおばあちゃんをもし家で介護するとなると・・・御家族の苦労はどれほどのものかと言うことが容易に想像できるだけに複雑なものがあります。
通常、これほどの重度の認知機能障害があると体の方も弱っていると思いがちですが、実際にはそうでない状況の認知症患者さんもたくさんあって、介護する側の人よりもよっぽど体の強い患者さんはたくさんおられるのです。
そういった方々が家から飛び出していくことを繰り返すと家族は毎回捜索で大変な目に遭うことになるだけでなく、場合によってはその先で起こした事件によって損害賠償を背負い込まされたりすることもあるわけで実に難しい。
体が丈夫であることは実際は喜ぶべきことなのですが、それを動かすプログラムの入っている頭脳のほうが、ショートサーキット状態では実際は介護の困難は数倍になることもあるのだという一つの例でしょうか。
認知症の家庭での介護は本当に難しいと思います。本当に。
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