2017年9月10日日曜日

どうしたらタバコを止めさせられるか

今日の病棟診察である患者さんと15分ほど話し込んでしまいました。

その方は今回ちょっとした喉の痛みで薬を処方された方なのですが、最近肩で息をするようになっている方でした。以前別のドクターが撮ったCT画像で”既に”肺胞の構造が壊れ始めていることが確認されている方です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の初期症状を通り越して次のステップに入り込み始めているのですが、不安げな表情を見せて私に様々に質問を投げかけてきはするものの喫煙量が変わる様子はありません。

ちなみにブリンクマン・インデックス(ブリンクマン指数 = 一日の喫煙本数 x 喫煙年数 400以上:肺ガン危険 600以上:肺ガン高度危険 1200以上:咽頭ガン高度危険)は既に軽々と1400程度。今のところ肺癌や咽頭癌は見つかっていませんが、上述のようにCOPDは既に死のドミノ倒しを始めています。

今の医学では事実上このドミノが倒れ始めた人の進行を止めることは出来ません。実験的なドラッグ、市販薬を含めて、使ってみてもこのCOPDの進行を止めるのは先ずもって無理です。

対症療法的に起こりうる、もしくは起きてしまった症状に合わせて周りを固めていくことしか出来ません。みなさんも時々街中で擦れ違ったりする事があるかもしれませんが、小さな酸素タンクを抱えているお年寄りの多くの方はこの疾患を持たれています。

私も病棟でCOPDの患者さんの最後を何度も看取りましたが、本当に肺癌もさることながら、COPDのエンドステージをもしビデオで喫煙者に見せることがあったら多分その恐ろしさに涙ぐむのではないかと思えるほど悲惨です。呼吸自体が多大な労力を要すため食べても飲んでも体は筋肉や体重を維持することは出来ず、(勿論食べる気力が残っていればの話ですが・・・)大概は(ガンなどを発症していなければ)寝たきりのままやせ細って「苦しい、苦しい」と呻きながら最後は意識も遠のき・・・と言う最後を迎えます。

”数年かけて加えられる窒息の刑”といえば最も正確な表現でしょうか。愚かなことに、それを看護している看護師の中にも喫煙をやめない愚か者が居るという救えなさ。

今まで何人もの患者さんが私の話を聞いて喫煙をやめてくれましたが、これを読んで、もし自分でCOPDの事を調べてその恐ろしさに気付き、やめてくださる方がたとえ一人でも居たら、ここに小文を書いた意味があるのかも・・・。

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