2025年9月27日土曜日

糖尿病の教育入院

今、日本人も飽食の時代の中でごく普通に糖尿病になります。

風邪に罹ったり、何らかの別の要因で肥満などとは関係なく膵臓のβ細胞が破壊されてしまってインスリンが殆ど放出されなくなってしまう事で起こる1型糖尿病とは異なり、肥満が元で起こる糖尿病の多くは2型糖尿病と考えられます。

そんな2型糖尿病であってもやはり背景にある性別、人種、遺伝(まあ広く言えばこれも結局人種的要因は含まれますが)、年齢等の要因が重なり合ってその発症に差が出ますが、いずれにしてもこの2型糖尿病で入院した人達の中で、インスリンが絶対的に枯渇してしまって種々の傾向糖尿病薬ではコントロールが追い付かなくなってしまった人達にはインスリンの自己注射を行うという治療法が追加されるのですが、自分で血糖を測定してインスリンの注射器の目盛りを血糖値に合わせて自分に注射する作業を「間違いなく」実行できるようになる為に暫く入院してその作業に間違いが無い事を何重にもチェックする為の教育入院というのを行います。勿論、食べ物や食べ方に対する教育も栄養課と一緒になって頑張って頂く事になります。

しかしながら、インスリンの注射の実習を行う中でやはり「認知能力・理解力」がその作業に追いついていない方、更には目盛りを読むだけの視力が無い方等はインスリン注射のリスクが高すぎて家での自己注射が出来ない、若しくはさせられない!という状況に陥る訳です。

まあ、それを発見するのもこの教育入院の大切な一環で、それが判明した場合は外部の施設で、そういう状態の方であっても血糖測定を行いながらインスリン注射をしてくれるような所を選ぶか、同居家族の方がそれを代行して下さるような状況の家庭に戻る事になります。

今回そのような事を学ぶために入院して来たお爺さんが居たのですが、どうしても高血糖の数値の範囲がXXの時にこの単位Xを打つ…という対応が理解できない事が判明した方がいて退院の方向性が変わってしまいました。

残念ですがこれは仕方ありません。高血糖はそう簡単には人を殺しませんが、低血糖は一時間もあれば十分に人を死に至らしめます。特に簡易測定器などで測定限界以下の状況での重症低血糖は本当に神経死を含む種々の命のリスクを持ち込む状況で、冷や汗、気分不良、手指の震え、動悸、意識障害、昏睡、痙攣等の重篤な状態が存在します。

そういう意味ではインスリンの誤投与等というのは恐ろしい状況をもたらしますので、絶対に避けたい状況。そう云う訳で今回のお爺さんは一人暮らしは無理と判定されました。

iPS、幹細胞など種々のシステムを用いて人工膵臓はいずれ出来る事は間違いありませんが、未だ「今」ではありません。こんな悩みをしなくてもある程度の範囲ではより広範に糖尿病が克服される時代もやがて来るのでしょうが、まだ少し先なんでしょうね。

多くの患者さんのみならず、医療者側としても待ち遠しい限りです。

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