2016年3月12日土曜日

老人と転倒

若いころには全く思いもよらなかったようなことが死に至るような危険な出来事になることがあります。

そういったことは身体の老化からくる総体としての反射的行動の低下がもたらすものなのですが、最もシリアスなものは私個人としては「転倒」だと思っています。勿論認知能力の低下がかぶさっていたりするのは多くの場合、致し方無いないのですけれどこれらはロコモティブシンドロームという言葉によって表される「運動器の障害により生起される要介護が必要な状態」の大変大きな結果の一つです。

種々の要因が複合的に重なってくるとはいえ転倒によって起きてくるその後の問題は実に深刻なものが沢山あります。一番大きなものでは頭部打撲による脳実質や血管系へのダメージ。または頭蓋骨骨折の発生でしょう。
更には顔面の骨折、眼球損傷等もあります。

更にはベッドから落ちた時に胸椎や腰椎の圧迫骨折を起こしたりして以降歩くのに障害が出たり、絶え間ない痛みが下肢を襲ったりすることもあります。また、上手く転倒を避けられないことによる手首の骨の骨折、大腿骨の骨幹部や転子部の骨折など数え始めたらキリが有りません。

骨自体も粗鬆症が進行していることが多く、若いころであれば決して骨折まではいかなかったような状況であっても骨折に至ってそのままベッド上の生活を余儀なくされたり・・・。

問題はここからです。ベッド上の生活が始まった高齢者はリハビリを入れていかないと実にあっけなく「寝たきり」状態になってしまったり、「譫妄、認知機能障害の急激な進行」が発生するのも大問題です。

医療者側もそれらのことを念頭に置いて予め予防線を張って注意深く対応しているのですが、常にそれがworkするわけでは有りません。ちょっと目を話した隙に転倒、ベッド柵の乗り越え、気づけばベッドの横に座り込んで居る、等ということは残念ながらかなり日本中の病院で毎日頻繁に起こっていることと思われます。

特に認知症を持つ患者さんを受け容れる病院においてはこれらのモニタリングや看護は実に大変で、看護師さんやヘルパーさんにかかる精神的、物理的な負担は並大抵のものでは有りません。
理想論を語るのは容易なのですが、医療経済学的にも人的資源の制限からも、常に一秒も目を離さずなどという看護は21世紀の現時点では如何なる観点からも「無理」な状態です。

人工知能やロボットの登場は実はこう言ったところに「非常に」待ち望まれているのですが、若い人が減っていくこれからの日本はこの点においては先進国で在り続けなければ医療の現場はやがて”シンギュラー・ポイント”を迎えることでしょう。

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