二年ほど前、同じフロアで働いていたadministrative unitの女性が亡くなりました。
乳癌でした。58歳。亡くなるには若すぎました。
三年ほど前にお孫さんを次々に授かり、お婆ちゃん業をやっと楽しみ始めた矢先の乳癌でした。バスケットボールの大ファンで、その熱狂ぶりから度々大学のバスケットボールのウェブサイトで紹介されるほどの女性でしたが、大学全体の応援も虚しく二年間の闘病の末、癌が彼女を斃してしまいました。
以前話した時は立派にキャンサー・サバイバーとして皆の前で元気に活動していたのですが、放射線治療、抗癌剤療法が加わる度に加速度的に元気が無くなっていきました。医師である自分がこういうことは言いたくないのですが、抗癌剤治療が彼女の命を縮めてしまったのではないかと感じるほどのやつれ具合でした。
外科的治療の後に真菌性肺炎や放射線皮膚炎、脱毛、免疫力の劇的以下、肺水腫による呼吸困難等あらゆる症状と戦って来ましたが、心も身体も疲れきってしまったように見えました。こういった治療が大きな副作用も無く確かに効く方は居るには居ます。しかし、やはり多くの女性にとって乳癌を病として得るということは今の医学では治療は「挑戦」の域を脱していません。
分子生物学的な素因や病態のバックグラウンドも年々歳々詳らかにはなっていますが、「治療」と言う意味ではまだまだ、本当にまだまだ劇的な効果を見せてくれる薬は登場していないのです。
次から次へと試されている治験薬も、出ては消え出ては消えを繰り返していますが、CMLやAMLにおけるイマチニブのような救世主が出てくるのが待たれます。
しかし、固形腫瘍は本当に良い薬がないですね、、、。
この土曜日に彼女のサービスがあります。アメリカに来て初めて出席するお葬式で、バプティストのスタイルがどういったものなのか予め他の秘書さんには聞きましたが、式中の行為は常識の範囲で済むもののようです。
一体何時になったら乳癌など「あらら、じゃあこのお薬出しておきますね~」くらいの感じで治療できる日が来るのでしょうか、、、。
0 件のコメント:
コメントを投稿