勿論、それは生活習慣病であればまだまだ対応策があるのですが、遺伝子に強く支配される領域の疾病になってくると、やはり個々人にそれぞれのなり易さというものがあると思います。勿論、生活習慣がその遺伝性疾患の発言に影響を与える様なモノもあるでしょうが、それでも遺伝子の差は大きい。
20世紀と異なり大きくその遺伝的背景の研究が進んだのは乳癌。アメリカでは特に積極的にその手の発癌に強く寄与する遺伝子を持つ方々が積極的に乳房の切除などをする時代にまでなっています。それでも、やはりこの疾病は多くの女性、特にまさに育ち盛りの子供さんのいるお母さんなどにも容赦なく襲い掛かります。
そして、例えオペが間に合って命が助かったとしてもその整容に大きな問題が残り、心にも大きな問題を残すのです。私自身も短い臨床経験の中で、乳癌で亡くなられていく女性の最後の瞬間に何度か立ち会わせて頂きましたが、やはりこの病は「制圧」されなければならないと強く思います。例え発症しても必ず制圧!
私が関わった中で最も若かった方は私の長崎の大学院時代に乳癌で逝去された20代の秘書さんでした。私が名古屋に来ていてちょっとした用事でウイルス研究室に戻った時の事、何時もそこに座っているはずの美しい秘書さんが居られませんでした。「あれ、辞められたの?」と何気に聞いたところ返ってきた返事は驚愕の内容でした。顔を曇らせた当時の大学院生の友人は「ああ、お前は知らんかったよな…。彼女、この前乳癌で亡くなったんよ」と一言。
まさに頭を金槌で殴られたような衝撃でした。声も出せず、衝撃の余りに黙りこくってしまいました。あんな若い美しい女性が何で?何で?何で?という事しか考える事が、というか考える事が出来ませんでした。
自慢の娘さんを乳癌で奪われた御両親の事を思うともう何も考えられないくらいの衝撃。人生はまさにこれからという時に突然の癌の宣告を受けて辛い闘病を行わなければならない等という事は起きてはいけない事だと思うのです。
もっと進んだ治療、もっと負担の少ない治療。やがては登場するのでしょうが、一日も早い登場を願ってやまないのです。
この秘書さん、亡くなる直前にこんな事を言い遺したらしいです。「良かった、私未だ結婚していなかったから、相手の男性を悲しませることが無くって」と。私達はその話を聞いて十分に泣きました。悲しみは皆に広がって止まる事は決して無かったのです。
今日も私の所に入院して来た乳癌術後のお婆さんの胸の状態を見て昔の事を思い出すと共に、この癌の制圧を心の底から再度願った一日でした。
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