2025年4月4日金曜日

複雑性PTSD

「ある患者さん」が幼少期からの長期に亘るDVの結果として酷い精神状態になって今病院で生きています。

精神科の先生が必死に診察・治療を行っているのですが、診ていて気の毒になるくらい精神状態が不安定で、自己嫌悪や感情の波の不安定さ、自傷行為、自殺企図等の教科書に出て来るような様々な「症状」を一気に表出しています。

病名は複雑性PTSD(Complex PTSD)。これは長期間にわたる反復的なトラウマ体験が原因で発症する心的外傷後ストレス障害の一種。例えば卑近な例としては、幼少期の虐待、家庭内暴力、戦時における戦闘体験、監禁などが原因となることがあるのだそうです。

そして、今回の患者さんの場合は家庭内暴力。ほんのこの前までは立派に社会の中で仕事をしていたというのですが、最近になって精神状態が不安定化し命の危険が表に出始めた為に、本人さんの同意を得て精神科に入院となりました。

折角、社会の中で有為の人材として機能していたのに、幼少期からの長きに亘るDVがこの時期になって悪の華を咲かせるような状況になってしまっているのです。虐待を行っていた親には自覚があったのか否か。今頃になって、割いて欲しく無い花がその花弁を満開にして自分の娘を蝕んでいる事実をどれほど理解しているのか?

これはやはり魂に対する殺人であると私は考えます。以前にもこの疾病を患った女性を間接的に傍で診たことがありますが、年齢に比して「魂が枯れている」という強い実感を持ちました。

この女性の場合は今回の患者さんとは別の理由によるものでしたが、それでも魂というのは傷ついたらなかなか修復出来ない、しかも傷つけられた時間が長ければ長いほど、その衝撃が大きければ大きいほど薬では到底治らない人格、性格等への強い影を焼き付けるのだと考えます。

感情の波が大きな間は先ずは命を自ら消してしまうリスクを回避するのに看護側も精一杯です。場合によっては個室に入って貰って24時間カメラの監視下に置き、15-30分に一回の巡回。それが一旦収束しても油断は禁物。医療者側も一時も心が休まる暇は有りません。治療、看護する側も本当に疲れるのです。

何としても「普通の状態・普通の生活」に戻してあげたいのですが、果たして上手くいくか。これから長い戦いが続きます。

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