2016年6月16日木曜日

認知症病棟の日常

認知症患者さんの集まっている病棟で内科疾患を持つ患者さんを毎日観ています。

認知症と言っても”見かけ上は”いろいろなレベルの方が居て、一見するとこの人は入院しないといけないか?と言う人も当然いらっしゃるのですが、時間をかけてよく話を伺っていくとやはり違った時間帯、普段は見る機会のない作業において「ああ、やっぱり問題だな〜」という行為が見られます。

夕暮れ症候群とか名前を見るだけでも想像できるかと思いますが、お昼までは何とも無かったおじいちゃん、おばあちゃんのなかで、看護師さんやヘルパーさん、ケースワーカーさんなどの傍に近寄ってきて「寂しい」「家に帰りたい」「・・・・・・(じっと人の手を握って見つめたり)」等という方が出てきたりします。
これらに対する薬剤による対応は勿論いろいろと可能なのですが、完全に効くという理想的な一律のの最終手段があるわけでは有りません。

中には夜中になるとムクッと起き上がってきて看護師詰め所に入ってこようとしたり、一晩中廊下を徘徊したり、トイレに行っては大小便を失敗したりというのもこのような認知症の進んだ方ではごく普通のことです。
更にはオムツをビリビリに引きちぎって大便を捏ねるなどというのもこれは普通の事。
何しろ、感情や思考のコントロールを司る大脳の機能に本質的な障害があるのですから”何が起きても”不思議では有りません。

但し、病棟としては患者さんを預かっているわけですから”事故”が起きるのは何としても避けたい。それでも、事故と言うのは起きるわけです。殆どの場合は転倒事故。お年寄りはただでさえ運動能力が低下しているのに”多動”である事も多く、時間帯を問わずスリップや転倒が起き、防御動作を取れないものですからその小さな動きが場合によっては”後遺症”や”死”に繋がることもあり得るわけです。(しかもそれは今日、今晩も全国の施設で起きているのです。)

そういうわけでは予想もしなかったことも含めて(予想の範囲で起こることは当然として)何でもありというのが認知症の患者さんが入っている施設、病棟の現実なのです。
それを日夜、本当に朝から晩まで献身的に看護師さんやヘルパーさん達が支えているのですが、全国的にはそういった患者さんに対して、言葉による虐待や体への虐待を行う不届き者も出てくるわけです。

そういった行為を行う人間をいわゆる”不適格者”と言ってしまえば話は簡単で単純に思えるのですが、そういうことをさせない為の教育や啓蒙こそが非常に大切なこととなります。(いわゆる予防ですね。)たとえ全国にいるヘルパーさんの10万人の内一人がこの前のアミーユの事件のように酷いことをするだけで、ヘルパーさん全体に対する印象を極端に悪くする御家族の方が出てくるわけでして、そのような小さな事件の積み重ねがその業界全体の印象を決めることになりかねません。(イスラム教徒への愚かな偏見と大して変わりませんよね。)

今日も頑張って日勤夜勤をする看護師さん、ヘルパーさん達の献身的な仕事あっての介護の現場。いろいろといつも自分で考えるのは、”自分の両親をもし入居させるならこのような施設を選びたい”と思えるような場所にすることです。

難しくてもそれを止めた途端に改善どころか劣化が始まると思っています。何事も一朝一夕では変わらない難しい話ですが改善を止めることは出来ません。

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