この先生のお話というのはウェブの上では時々私自身の眼にもとまっていましたし、多分テレビや他のメディアでも度々取り上げられていると思いますので改めて私などがお話をするようなものではないと思います。
しかし、この先生のお話の中に出てくる働かないアリ、ルールに従わないアリの話は実に興味深いです。
組織が全体として効率良く働く事を極限まで追求し続けていくとどうなるかということを実に「淡々と」誰もが理解できる形で納得の行く形で説明されているのを読んでいくと思わず「ナルホドね〜」と心のなかで頷いてしまうようなお話が満載です。
それが独断に基づいた哲学的なものではなくて、「科学的観察」に基づいたものから導かれた仮説だということが面白い。
長い長い、本当に長い時間かけて進化して繁栄してきたアリ達が築きあげてきたアリの作る社会構成が全員働き、全員戦い女王様を守り、、、というような我々の単純な想像から導かれる単線の物語を遥かに上回る、予想を超えた幾つもの複雑な「一見すると無駄に見えたりするredundancy」が巣という社会を可能な限り長持ちさせるベストなシステム構成の枢要なのだというお話。(だと私は理解しましたが。)
兵隊アリと言われている有りが実は真っ先に逃げ、2割のアリは全く働かず、遠隔地の未開の地を探検するのは元気な若手では無く老いたアリで、生物学的なマーキングシステムに則って歩かない変わったアリの存在が結果的に全体のシステムの効率性を上げる可能性を常に持っている等々、、、。
これらのお話を読んで私が個人的に頭の中に思い浮かべた言葉は「奇貨居くべし」というものでしたが、効率だけを求め続け、効率的に働かないものを排除した時に最後にその組織に起こるのは「効率的に働き続けた働き者の死」による組織の崩壊。人材というのは実は代えがたいもののようにあっても殆どの組織の場合は歯車。歯車として常に替えが効くものをストックし続け置き換えが効く状態でアイドリングさせ、イザという時にその成長を待って投入。(そういう発想が良いか悪いかは別として!)
更には組織の中での役割が?というような疑問符がつくような者でさえも、全体の中に要員として取り囲い込んでおいて、その「他の個体には無い」珍奇な行動が起こす珍しい動きが残りの全体に影響を及ぼす場合を待つというのは非常に面白い話だなと感心しました。
良くGEなどはボトムの10%を切ることで成長をしていく話が持ちだされますが、切り取られた残りの10%と言うのはウェルチに言わせれば他の仕事をしたほうがその人の為にも〜等という風に語っておりますが切りだされた人を受け容れる残りの「社会」の包容力がなければ、その多くは超長期的には結局は非情に切りだされただけの負け犬として「最後には」GEと言う会社自体をも養っている人の社会の中でGEにとってのネガティブ・ファクターになって行くことは考えないのでしょうかね。(スマートと言われる一連の連中が如何にも考えだしそうな文句をつけることの難しいスマートな解雇理由ですね。w)
まあ、世界最高の経営者などと言われ、実績を出している人の言説にアリの行動観察から私が勝手に感じた言をここに書いても地球の裏側の蝶の羽ばたきの喩えほどの影響もありませんが。
私は企業や文明の真の成熟というのは「効率の外」に置かれた人をどれほど包容できるかというその余力の大きさだと常々考えているのでアリの話は心の底から染み入ってきたのでした。GEは企業としては凄いけど、良く働く能力のある人を集め続けることができれば別にGEで無くても同じようなoutputを出す企業は出来るわけで、特に人として尊敬できる凄さがその経営観の中にあるとは思いません。無論、ウェルチの著作は読んだこともないのですが。w
同じ重電や重工業の会社でGEと同じようなものを作る会社は日本を含め世界中にあるし、、、。例えば飛行機のエンジンもGEのものでなければ!なんてことは無いし。(PHもRRも強敵ですし。)MRIもCTも発電機も然り。
まあ、今後もせっせとボトム10%の首を切り続けることに精を出されてください。
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