2009年12月9日水曜日

研究のための予算

車を走らせるにはガソリンが要るように研究を進めるためには研究資金が必要です。
大昔の話などは科学者と言われる人たちがどんな風にお金をとってきたのか読む機会もありましたが、一様では無く、王侯貴族のパトロンが居たり自分自身が貴族で金持かつ研究も趣味でやってたり、などという感じが多かったみたいですね。中にはメンデルのように牧師さんでありながらも興味の赴くままに、素晴らしい観察眼で今日の遺伝学の礎を築いた人も居ます。
翻って21世紀の今はどんな感じかというと、基本的には政府関連の予算が大学人の基礎研究を支えている状態で、それに幾つかの個人や財団レベルでのファンドが財政的な支援をしているという感じだと思います。基礎と応用の両面に亘って幅広く、かつ巨額の資金で推進しているのは民間も同様なのですが、やはりその資金量の驚異的な豊富さは時に新薬などという形で世間に開陳されるワケです。
しかし製薬会社の人たちに話を聞いていると実際に「モノ」になる研究というのは極々わずかの割合であって、それは水面上に現れる氷山の一角などというようなレベルの高い比率(笑)では無いということだそうで。この話を聞いていてもそうだろうなと納得出来るのはこの手の実験を日常的にしている内輪の人間だからであろうとは思いますが、こういう話は研究開発など自分の生活には一切関係ないなどという普通の人達にはどう映るんでしょうか。実際に、こんな話を聞いても一億円の「基礎研究」への投資が実際に「製品として金を産んだ割合が100万円でした」なんて話を聞いたら私は素直にポジティブな意味で「それ凄いね」と言ってしまいそうです。
自分達のレベルに立ち返って話をすれば、実際に億の単位のお金どころかせいぜい千万単位、通常は百万単位の資金で研究を進めている人が大部分で、そのお金すら無いという人も大勢居る訳です。ですから私のような弱小研究者というのはいつでもお金にはピーピーしているわけで、どうやって論文を仕上げ、今まで溜め込んできた研究資産を用いてやりくりするかということに汲々としている訳です。
貧乏曲線というのがありますが、金無い→研究できない→グラントの評価が悪い→金無い→以下同じ、、というようにならないようにすることが切実になってきます。一度大きな予算を掴むとそこで「絶対に」外さないようにしないと大きな予算例えばここで言えばR01などは本当に二度目を継続として取るのが難しいと言われています。要するに与えられた五年のうちに成果を出して研究者としての資質を見せろということなんですね。
無論、ここアメリカでも、大ボスの研究グループの仲間として一口乗っかって研究仲間として研究費のおこぼれを貰うヒトはいます。「賢い人」はそうする手もあるのでしょうが、面白くもなんとも無いので私個人としてはそのような手段には決して手を出さないようにしています。
自分なりに理想かなと思う研究費は毎年2人の賢いポスドクを持っていて、(これだけで真水の資金8-9万ドルかかります。)物品費としては3万ドル位あればという感じですので15万ドルくらいの予算でしょうか。しかしこれは単一のR01ではカバーしきれないことが殆んどです。
では私くらいの年齢で単独でR01二つ持つ?まず無理です。今のR01の初取得平均年齢は驚くほど高齢化してきています。最初の頃四十前後だった初取得の年齢はこの二十数年間でそのまま年ごとに高齢化している感じで、すでに四十代ではありません。確か50大半ばだったのではないかと思います。

世の中そう甘くはないですね。w

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