日本から送ってもらった期待の一冊、三浦しをんの「風が強く吹いている」。合間を縫って一気に読ませていただきました。一言で言えば非常に良く練られた小説だなと感じました。最近読んだ和書の中では面白さという意味で二重丸を付けたい本の一つです。
まあ、あちこちで書かれていることですが、「こんなの有りえない」というとそれまでなのですが、そのプロットの荒唐無稽さを考慮しても読後感は爽やか極まりない良質のものでした。
自分の学生時代、その当時(25年前)でさえ既に伝説になっていたような、少しでもお洒落や彼女と縁があるような輩は絶対に近づかないような下宿に住んでいましたので、この小説の持つリアリティーは全く虚構とは反対の当時の私の生活そのものでした。
ギシギシなる階段。将棋の駒の彫りこめられた柱。畳が腐ってそうな床。隣の部屋の音まる聞こえの部屋。鍵などした事も無く、ある時などは見知らぬおじさんが私の部屋でビデオを見ていたり、家に帰ったら酔っ払った友人達がいびきをかいて寝ていたり。一階には明らかに中核派で留年を繰り返している人が住んでいて、部屋の戸の前に中核派の機関紙「前進」が束になって置かれていたり、、、。
もう、滅茶苦茶。(笑)
でも、誰もそんなこと気にしない良い下宿でした。
大家さんの方針で、駐車場にしてしまうということになり立ち退かざるを得ませんでしたが、あんな男おいどんのような生活はもう二度と帰ってこないのかなと思うと、この本に書かれていた世界が自分をタイムスリップに誘ってくれたようでその部分の記述だけでも満足したのです。しかしその上に更にこの駅伝の話が重なってくるのですから面白くないわけがありません。今は嫁さんが読み始めました。感想が楽しみです。映画のほうもいつか機会があれば見てみたいもんですね。
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