2009年11月24日火曜日

変わってないよなと思うこと

柳田先生が2002年に科学技術政策研究所で発表された発表の内容が、今もウェブですぐに見ることが出来る状態で公開されていますがその中の文章に以下のようなものがあり強く同意できる部分がありました。端折ると内容が伝わらないかもしれないのでそのままコピーします。

私の個人的意見ですが、日本の生命科学研究の現状はと言いますと、研究水準は驚くほど高いと思います。驚くほどと言いますのは、置かれた環境を考えたらということでして、評判のわりにはということで聞いて欲しいと思います。要するに、実際に周りで言われている、もしくはちょっと見よりは非常に高いということです。しかし、世界での存在感は実際の実力に比してやや低い。ややという表現より、率直に低いです。評価も、特に米国において、相対的に最も低い。しかし日本国内においての評価が一番低いかもしれません。では日本に対する評価はどこの国が高いかというと、やはりヨーロッパが一番高いです。英国やドイツ、それから北欧もお話ししたらすぐ分かると思いますが、彼らは驚嘆しています。オランダの人でしたら、人口は少ないけれどもサッカーだったら日本に勝てる。けれどもサイエンスでは負けると言っています。なぜかといえば、例えば、『ネイチャー』や『サイエンス』というようなジャーナルを見れば、毎号毎号日本から論文が出ている。ですから、日本の生命科学はすごいものだと。20年前には考えられなかった新しい現象が日本で起きているに違いないと言います。
米国は日本を無視と言いますか、「日本、そんなもの知らない」という傾向があります。やはり米国も結構内向きの国です。それこそイチロークラスの選手が20人ぐらい日本から行けば、米国の日本に対する野球の見方も変わるのと同じように、サイエンスも変わるのかもしれません。けれども、日本の研究者も独自の視点を主張しない傾向がありますので、国内的存在に止まる人々が多い。
でも逆に言いますと、日本の研究者が独自の視点を言って、もしも勝つとすれば、彼らの相手はどこにいるかといったら、ほとんど米国にいるんです。そういったことを米国も漠然とは分かっているはずです。野球の世界と違いまして、サイエンスの世界はそこに国益と言いましょうか、国の産業も絡んできますので、日本の生命科学みたいなものに対して、米国研究者の中には意図的に無視するような態度をとっている側面もあると思います。
もう1つは、日本の科学者がやはり真の意味で外国人研究者にフレンドリーではないということです。例えば、私が国際会議でいつも驚くのは、日本人で外国人の学者などと一緒にご飯を食べている人は少ないということなんです。だいたい日本人同士でご飯を食べてます。それを別に悪いと言っている訳ではないのですが、日本人にはそういう傾向がある。やはり文化的な差は大きい。ですから、独自の視点で自分の学問成果を主張して、本当に日本の研究者の学説が認められた時には、逆に競争相手の米国の学説は負けたとまでは言いませんが、日本のほうが上だということになるわけですから、それを乗り越えていくのはやはり大変だということです。
以上が記述の一部なのですが、何だかずっと状況に変化が無いような気がします。私は癌研究を初めて未だ15年しか経っていませんが、日本の科学に対するアメリカの見方というのは未だに上の記述のままだし、日本人の国際学会での行動様式もまさに後半部分そのもの。せっかく持っている科学的素養や見識も会話や主張を恐れる余り、相手が日本人の研究そのものを知るのは論文からのみという事態が遠い昔から続いているわけです。
まあ、そういうアメリカの研究を支えているのはハッキリ言って外国からやってきた精々二世迄の世代が多いです。前にもちょっと書きましたが、私の大学でも教授の中に占めるNative English Speakerの割合なんて五割は無いはずです(他の英語圏から来た人もNon Nativeと考える)。これだけでもアメリカのサイエンスを支えるのは誰かが良くお解りに成るかと思います。それ以降の世代は親のメンタリティーは失ってみんな金が儲かる学部へ行きます。(笑)そしてリーマンショックとか起こしてくれるわけです。

これは提言でして、ここに書いてありますように「信じられないくらい」改善する方法です。ということは、逆に言ったら改善するのが信じられないくらい難しいとも言えるかもしれません。外国人研究リーダーと研究員が多数参加できる環境。少数の研究所や大学の研究科でもいいんですけれども、ともあれ外国人研究リーダーと外国人研究員がぞろぞろいるような研究機関が必要です。また、日本の研究者の英語力、しゃべるだけではなくて、論文を書くレベルで飛躍的に高めることが必要です。社交性も高める必要があるでしょう。それから、研究室の環境を改善する。やはり余りにも環境が外国などと比べて悪いです。そして、研究者は私的な時間を大切にするために研究室にダラダラいるような無駄な時間は過ごさない。なおかついい研究ができるように、我々自身も身を律していかなければいけないと思っております。また、女性研究者が元気でリーダーになりやすい、そういう研究環境であれば、いろいろと有能な女性もこの世界に入ってきてくれるのではないか。また、多数の若い研究リーダーを競争環境に置く。こういったことが必要だと思います。これらは信じられないと言いますか、こんなことはなかなか簡単にはできません。けれどもこれができたら、今のものから、ランクにして3つ4つポンと上がるのではないかと私は思っております。
上の記述にも大いに賛成です。
どこに行ってもたまに居る外国人研究者は中国人留学生だけなんていうラボばかり。ましては教授にいたっては日本人のみ。

国際化する必要の有無は別として国際的に有名な研究者が日本に教授として根付かない状況はやはり寂しいですよ。
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