2012年10月4日木曜日

教育の機会均等は(今の時点では)理想論

ボルチモアに行った娘から電話があった。
貧困地区にある学校で、週二回、各三時間半ずつ中学生の放課後授業のアシスタントティーチャーを始めたとのこと。宿題や課題解決の補助がメインらしいのですが、電話越しに娘の口から出えくる言葉を聞いていると、教育の機会均等は現場で教育を行う者にとって理想論でしか無いということを強く感じました。
例えば、ある中学生の男の子は、兄弟がたくさん居る中で、上の兄貴二人は若くして既に刑務所にぶち込まれており3ストライクで出てくる目処はなく、母親も彼らの将来に関しては全く夢も希望も抱いて居ないという。そんな環境で育てられる子供達が果たしてより高い教育機会を与えてくれる上級の学校へと容易に進学することが出来るでしょうか。答えは明らかにノー。
娘も教え始めてすぐに気づいたことは年齢に比して明らかに勉強が進んでいないということだったそうです。周囲に目標となるロールモデルもビジョンもなく、将来の夢が何も描けず、親からも何も教えられず、学校の先生でさえ彼らには何も期待しないと言う厳しすぎる現実。もし、そこ(底)から這い上がって将来を嘱望されるような人間が出てくるとしたらそれだけで「破天荒」と言われるレベルの稀な資質を持った凄い人間だと言えるでしょう。
対極にあるのは資産家の子息たちだけではなく、普通にまっとうな親から育てられ、特に何の苦労も心配もせずに育ってきた子供たちでさえその対極の一つと言えそうです。この感じ、ほとんど21世紀に生き残る花形満と矢吹ジョーの世界のような気がします。もしくは左門豊作か?
娘曰く、誕生日を迎えた男の子にケーキを皆で作る作業をしてお祝いをした所、戸惑うくらい激しく感謝されたそうです。よっぽど嬉しかったんでしょうか。今までそんな事されたこともなかったのでしょうかね、、、。
今、このような子供たちに教育機会の均等を目指して精力的に活動しているのがTeach for America (TFA)と言う当時プリンストンの学生ウェンディ・コップが書いた卒業論文が元になって始まった組織です。何と言っても驚くのはハーバードの卒業生の約20%がアプライするというこの組織、既にアメリカでは2007年にトップ10のエリート就職人気先ランクに、文系の就職先としては2010年にはアップルやグーグルを抑えて堂々のトップに入っているみたいです、、、。
二年間の経験を経て巣立っていくTFAのメンバーは20年の歴史を経て、きちんと実行力を伴ったエリートと見做されているようです。この点をウィキで読んでみると、
TFAプログラムの出身者が運営する各種学校は2007年9月時点で282にも上る他、学部学生の最初の就職希望先(転職が当たり前であるアメリカでは「キャリアをスタートさせるに相応しいと考える場」と表現される)として、2006年の43位から2007年には並み居る大企業を押しのけて10位に躍進している。こうした人気の背景には、ジェネレーションYと呼ばれる1980年代以降生まれの世代の、共同体意識としたたかな心性を併せ持つ若者たちが就職年齢に達した状況があるとも指摘されている。またデロイトアンドトウシュ(大手会計事務所)やグーグル、ゼネラルエレクトリックはティーチ・フォー・アメリカと提携し、採用内定学生が就業前の2年間TFAプログラムに参加することを認めている。JPモルガンもやはり採用内定学生のTFAプログラム参加を認め、更にこうした学生への契約金支払いをTFAプログラム参加前に行い、加えてTFAプログラム参加中の採用内定学生の為のサマーキャンプを実施するなどの対応を採っている。これら大企業がTFAプログラムに参加する人材を優遇する背景には、TFAプログラム参加者が創造性やリーダーシップにおいて優れているとの評価が確立しているという状況がある(前出ビジネスウィーク誌記事)なおティーチ・フォー・アメリカはファストカンパニー・ドットコムが毎年選出している「45の社会的起業家たち」に複数回選出されており、2008年版ではティーチ・フォー・アメリカの他、ティーチ・フォー・アメリカからスピンアウトしたザ・ニューティーチャー・プロジェクト、ナレッジ・イズ・パワー・プロジェクトも選出されている。
と書いてるのです。
今度、ホプキンスにウェンディ・コップ来るとのことで、娘はその話を聞いてからアプライしてみるかも?と言ってました。どうなるのでしょう。
勿論、私の選択は彼女の選択を支援することしかありません。既に18になって自分達の手もとを離れていった娘に金のない親がしてやれることと言えば、心からの応援と当てにならない助言くらいでしょうか。
ボルチモアでの今の仕事に関しても、子供達を上に引っ張り上げる方法論に関して電話で話し合いました。何か色々と自分なりに思うところがあるようでした。
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