2025年12月2日火曜日

治せる!だけど手術はしないという選択

ある御高齢の患者さんにあるタイプの消化器の癌が見つかりました。

具体的には明かせませんが、別の内科の先生がフォローされている時に急速に鉄欠乏性貧血が進行してきた上に黒色便が目立つという事で「これは…」という事で上部消化管にファイバースコープを挿入したところ残念な変化が直ちに発見されました。

ところがこの方には著しい認知機能の低下があって、娘さんにお話しした時も「もしかするとオペ自体は出来ても外科の先生のご判断は患者さんはオペには向かないと言われる可能性が高いです」というネガティブに判断される可能性にはじめから言及していたんですが、大学の消化器外科先生の判断はやはりその通りでした。

クラスもまだIIで、5年生存率は状況にもよりますが7割弱程度はある筈です。しかしながら、この「オペ適応」を判断する一覧表があって、それによるとやはりオペは行わない方向に妥当性があるという判断が示されたとの事で、娘さんも最終的には完全に納得されて放射線照射による緩和ケアのみ行って帰院して来られました。

今回はこのような状況でしたが、今後は恐らくこのような判断で認知症の高齢患者さんは「積極的な治療」は行わないという事が一次的なコンセンサスとなる時が来たのでしょうね。

親父や母親と話しても「こんなに長生きするとは思っとらんかった!w」という様な感じの話が多く、充分生きたからもう余計な事は絶対するなよ!と念を押される始末。

まあ、厚労省も実際に保険点数の誘導で国家の医療をこちらへこちらへと寄せて行っています。恐らくこれからは民間病院はオペをやってもまともな点数は取れず、外科医は更に大幅に減り、緊急のオペが出来る人はずっと絞られ、更に大きな負担が個人にかかって来るのでしょうが、実際はそれが保険点数で報われないどころか労働基準法でそういうオペの時間は存在してはいけないみたいな世界が「必ず」やってくると感じています。

そしてますます外科医は淡々と高齢化し減っていくという様になるのでしょう。危なかったらすぐにオペを検討して貰える時代はもうこれからは消えていく事必定、というかただの現実になる時代です。

民間医療保険を契約できる層とそうでない層には医療格差が登場してくる事でしょう。

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