全国の病院で今日も誰かが転倒のインシデントに遭遇し、救急の対応を受けなければならないような状況に陥っているのです。患者さん自身も大変、患者さんの御家族も大変、医療者側も大変。そして、もし送り出す必要があるような医療施設であれば、受け入れ先の病院も救急系が中心となって沢山の人達が受け容れに向けて動き出す訳です。
勿論、それを搬送してくれる救急隊の人達もそれに関与してきますから、例えば一人が転倒して何らかの外傷が発生しただけでも本当に大勢の人間が動き始める事になります。
それを防ぐために日頃から転倒傾向の多い患者さんを放置せずに腹帯や軽く紐で拘束をする、またベッド柵で囲むようなパターン等もある訳です。また、例えばベルト付きの車いすに座っていてもそれが横に倒れたりもします。こういった拘束なんて本来はしたくもないし、可能な限り減らしたいのですが現実問題としてそれ無しで今の日本の病院の「動ける」老人達が入院している病棟を全てカバーするのは無理です。
大きなお金が下りてきて、看護にそういった「拘束完全無し」という実験的な介護への挑戦が出来るような大学病院などは良いのでしょうが、そんな理想に近い看護は市中病院の様に常に人手不足との戦いを強いられているような所ではまさに「夢のまた夢」でございます。
実際に日常の老人の転倒で良くあるのは大腿骨頸部骨折、顔面打撲、頭部打撲とそれに伴う頭蓋内の脳実質や血管損傷、更には手を床に着いた時のガレアッチ骨折、モンテジア骨折などです。これらも本当にいろいろな程度があるのですが、特に頭蓋周辺の損傷はそのまま命の帰趨に関与してきますからその深刻さは一桁上がります。
転倒という事自体は老いや障害とどうしても強く関与してきます。防ぎようも無い事も多いのですが、それでも努力は続けるしかありません。それしかありませんからね。
日々インシデントに対応されている世界中の医療関係者に今日も敬礼です。
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