2016年6月15日水曜日

結核の患者さん

病院勤めを再開してから結核の患者さんに出会うことが日常的になりました。

結核というと市井の多くの人々にとっては戦前や戦争直後の日本がまだまだ貧しかった頃のイメージが有るのかもしれませんが、実は日本では今だにほぼ毎日都道府県数に直せば一つの県に一人という割合で毎日のように結核の新規患者さんが見つかっているのです。(一日六十人前後)

先進国の中では日本は結核の患者発見数が多い方でして、アメリカの四倍以上。しかし、多くの国でもやはり天然痘のように絶滅させることは出来ていません。菌の性質にもよるのですが、最大の理由は勿論”多剤耐性菌”の出現で、大昔のように一剤で倒せるよな結核菌は本当に居ないのでは?と言う感じで、今では三剤、四剤の併用療法がスタンダードになっている上にそれでも効果の無い結核菌があり、アメリカなどではそのような患者は銃を持った係官が周囲を24時間警備した病院?で脱走不可にしているというまことしやかな噂話までありますが・・・。

最近は高齢者の方々の発症が非常に多くなっているようです。(下の2つのグラフ)
結核というのは感染はしても発症はしないという方が大多数で、おおまかに言えば結核菌に暴露しても生涯を通じて発症されるのは一人から二人と考えられています。しかし、若いころに感染して自然治癒したりしていた方が高齢者となり、免疫力の低下とともに再発して、、、と言うパターンも多いのです。
しかも、副作用はあるものの、治療という意味では優れた薬が次々に登場し続けてきた戦後の一時期とは異なり、最近は数自体は当時に比べて激減しているものの、当然の如く減少”率”は低下しないという傾向が顕著になっています。
また、ご当地である名古屋は大阪に継いで二番目に結核の罹患率が高いところで、日本の平均である10万人あたり15人という数値のほぼ二倍ですので、実に患者さんを見つける可能性の高いエリアだと言わざるを得ません。(裕福な産業都市であるために、全国から生活保護を受ける方が片道切符で送られて来るなどというまことしやかな都市伝説も昔から聞きますが!)

wikiより(まさに結節を作ってますね)
結核は別に肺ではなくとも体中のありとあらゆる所にフォーカスを作ります。結核は21世紀の先進国日本においてさえ、医師が決して種々の重要な疾患の一つとして鑑別診断から落としてはならないものの一つです。
微熱や長引く咳、血痰、体の怠さのどれか一つ以上が長く続くような方は一度病院に行かれることを心よりお勧めいたします。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

写真は肺なんですね…怖い!こんな風になるなんて!
1日60人という数字にもビックリです。
1年で、じゃないんですね。
人の多い東京が1位じゃないのは意外でした。
通勤ラッシュでうつり易そうな気がするのに…

small G さんのコメント...

無論、大量の人が乗り降りする通勤列車ではそのような保菌者とすれ違う可能性は常にあります。
しかし、それでも尚、そのような日常の行為を恐れる必要は全く有りません。それこそFUDというものです。

正しい教育と適切な対応、そして何よりも貧困、衛生状態等の改善が間接的ではあっても結局は時間をかけて大きく効果を表すのがこの病気です。
今まで同様、普通の生活をお過ごしください。:)