2016年3月25日金曜日

己の意思で死にたいように死ぬ権利

入院している患者さんで、今ある病を得て命の灯火が消えかかっている方が居りました。

しかし、この方は非常に頑固一徹。
今まで縁が切れていた御家族も死の影が見え始めている父親に遭うために役所が居所を探し当てて連絡をとってくれた後すぐに病院に駆けつけてくれました。

御家族にお話を伺うと、とても人様にお話はできないような事も含めてわがまま放題やってきて家族は散々振り回されてきて大概迷惑だったとのことですが、それでも未だ片隅には愛情が残っていて可能であればもう少しだけ生かしていただけないかとのお話も・・・。

しかし、患者さん御本人は酸素でさえ”可能であれば”使用したくないとのこと。私の勤める病院はホスピス専門の病院ではありませんし、この方は幸いにして痛みに関する緩和ケアは不必要な方でしたので、呼吸苦の困難と本人の”生きる証”としての自分自身による摂食への希望は絶たないようにケアはしつつも、輸液や投薬を”拒否”されるようであれば、入院を継続させることは出来ません。

それでも、ヨーロッパの病院の様に”自力で口から食べられなくなったら”モニタリングも輸液も、検温さえも一切せずにそのままお亡くなりになるまで保存的に見送るというような事は現時点では当院ではしておりませんので、そこが難しい所です。

頑固というのがありとあらゆる方向にハリセンボンの様に飛び出しているのに、お話は穏やか。
人というのは見かけでは全くわからない所が本当にたくさんある不思議な生き物です。

己の命のエンディングをどういう形で迎えるのかという点に関しては何時も最大限に御本人の御意向を尊重したいと考える自分です。

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4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

しろうとなので、もしかしたらお医者さんから見て常識外れな質問かも知れませんが…
「輸液や投薬を”拒否”されるようであれば、入院を継続させることは出来ません。」ということは
たとえば「輸液も投薬もして欲しくないけど、いざというとき(急変?)のために入院していたい」という人が入院するのは難しいよということなのでしょうか?
最低限どういう処置(治療?)を受け入れれば入院継続が許される感じなのでしょうか?

両親とも健在でいまのところどこも入院するほど悪くない(糖尿とか通風とかがある程度)のですが、父親が常々「チューブだらけは嫌だから(いざというとき医師から家族にどうするか質問されたら拒否してくれ)」的なことを言っているので、ちょっと知っておきたいなと思いました。

small G さんのコメント...

病院によって規則の違いはあるのかもしれませんが、通常入院によって利益を受けられる方は治療行為を受ける方でないと、次に治療を待っておられる方が居るわけで、全面的に治療拒否をされるのであればホテルやご自宅、その他の施設に行って安静にしていただくというのが”他の患者さん達”の大きな利益になるわけです。
現状、ベッドを何もしない方で埋めることが可能なのは一般内科病棟では流石にできません。
それが可能なのはホスピうとかなのかもしれませんが、私はホスピスのことは正直知らないくて、完全に治療拒否をされた方でも安静を目標にただステイすることが出来るのかと言う質問には正直「わからない」と答えるしか無いのが現状です。
最低限の処置という意味では、投薬治療を受け、かつ入院してその状態観察を常に行っておくだけの事由がなければ入院する必要もありません。
ただ、日本には「社会的入院」というのがありますので、そのような方が安静病棟にとどまり、次の転出先施設を見つけるまでの一時的な対応として入院を許可していることはあります。
その際はほぼ投薬がないような方も正直いらっしゃるのは間違いないのですが、一般的に寝たきりや認知の介護のほうが大変で、家に戻せないというような方が中心になっているのは間違いないです。

匿名 さんのコメント...

smallGさん、質問に答えてくださってありがとうございます。
とにかく何かしら治療行為が無いと入院が難しいということがわかりました。
口から食べられないけど輸液は嫌だ、薬も嫌だ、というなら
ただ寝ているだけですものね。
治療が必要な方のためのベッドを寝ているだけで占領することはできませんよね。
ホスピス…入るのが(空きがなくて)難しいと聞きますが、
いざとなればそういう方法も考えなくてはいけませんね。

small G さんのコメント...

いやあ、医療者サイドの立場で杓子定規に答えるとそういう回答になるんですけど、実際にお前の両親が入って同じ事言ったらどうする?っていうと難しさは一段違いますね、正直。
その時はしょうがないから施設を必死で探すくらいが取り敢えずの次の一手になりますかね。私の場合も。

保険や医療費のことも複雑に絡んできて簡単ではないです。この手の話は。