2015年5月20日水曜日

日本の介護の近未来

最近あるドクターと話すチャンスがあって、厚労省の医療行政に関して様々な見解を伺うチャンスが有りました。

車の助手席に乗りながら、その先生の話される見解をずっと聞いていたのですが、とても面白くて示唆に富むものでした。こういった自分とは全く異なる立場から医療行政を見る人の視点は実に冷徹でした。
その先生はある大きな病院チェーンの経営者でもある人なのですが、実務を行う上で厚労省の意図を保険審査という面から見抜いていくことが必須という立場にあります。そうでないと潰れますからね・・・。

実は今年の4月の在宅医療に対する厚労省側の保険点数改正は物凄い大鉈だったのですが、世の中の多くの人達はそんなことには殆んど関心を示していません。無論私もその人間の中の一人だったのですが、多くのお年寄りがその老後を過ごす老人ホームのような施設を訪れるタイプの訪問診療に対して保険点数が何と四分の一に減額されたのでした。

一般に訪問診療という名前から想起されるのは老人が住む、もしくは家族等によって介護されている個別の家を訪れてそれに対する診療を行うことが訪問診療という感じを持たれるかとは思いますが、実際にはそんなところだけをまわっていたらドクターなんて何人居ても今の日本では到底足りません。
そこで、当然の如く「終の棲家」の一種として当然看みなされる沢山の人が住んで、一手に介護を受けている老人ホーム等の施設に対しても「医療組織」はドクターを派遣して訪問診療をしているわけです。

何故かと言うと理由は簡単で、ドクターや看護婦が常駐しているようなレベルの施設など普通はごくごく限定的なもので、それらは実質的には「病院」と呼ばれる施設ですからもう訪問はする必要もなく、内部で診療する病院になってしまいますが、もう一度元に戻って話をすれば絶対的にドクターやナースの数が足りませんしね。

結局、厚労省は何がしたいのかという点にドクターと話は移っていったのですが、長い話の結論は「国は老人に家で亡くなってもらいたい」というものでした。
いろいろと途中で細かい数字などが出てきたのですが、実は老人医療というものが国庫から引き出す金は他の社会保障費の中ではこの十年でも全体の伸びからすると実にパーセンテージとしては小さなもので、実際に医療費を押し上げているのは「高度医療」とそれに付帯した高額の医療用品・薬品群だというものでした。

しかし、まあ、昔のような武見某のようなゴリ押しに強い業界の権益を代表するような人間は在宅医療に関してはそれほど既得権益に噛んでいませんから厚労省のこういった動きを特に静止することもなく、老人医療費が「かかっている」という悪者を創りだして、そこからまずシュリンクさせるという作戦をとってきています。

まあ、確かにそういった見方から考えられるこの先の動きは益々こういった施設にさえ入れないような多くの老人たちは、閉じ込められた家でかなり悪くなるまで殆ど医者に定期的にチェックアップされることもなく、相当悪くなった時点(=もう助からない)、という瞬間に至るまでは見捨てられたようになっていくだろうということです。

そうすれば、高齢者に高度医療(国庫にとっての金食い虫)を施すチャンスも当然無くなってきますし、その人達に医師が時間を割かれることもないという、行政にとっては一粒で二度美味しい方策。
ヘルパーさんなどへの賃金低下は実質的にはこういった施策から受けるコラテラル・ダメージと言っていいものだと感じますが、この政策の行き着く先を想像すると見てはいけない恐ろしいものを深くて暗い谷底に見たような気になるのは私だけでしょうか。

北九州の「おにぎり食べたい」と書き残して餓死した人がいましたが、そう言った動きは金をセーブしたい「背に腹は代えられぬ」自治体を中心に益々増えていくのでは無いでしょうか。
今後は益々、そいった孤独死や老々介護が複雑に絡まった「暗い、ショッキング」なニュースが数多く待っていることと思われます。

そのニュースの一つにはなりたくない私ですが、、、果たして避けきれるか否か・・・。コレばかりは誰にもわかりません。

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