2014年2月11日火曜日

良い薬を作る競争

実験をする時にはモデルを考えてそれを実際の事実に応用するための「最も単純化した場合」を考えて実験を組み立てていきます。

ですから実際には生体においてはとてもそんな単純な図式では描ききれないような事もあたかもその実験が成功したことで、「体の中にその系を使って行った結果を戻してもそれが上手くいくのではないか?」等という淡い期待を抱きながらアニマルモデル、ヒトモデルへとステップを上げながら実際の治験などで成果が出るかどうかを見ていくことになります。

以前、実際のそういったステップを製薬会社の方とお話したことがあるのですが、それはそれはモデルで始まった仮説実験が最終的に製品化されることの恐ろしく低い確率の話を伺ってビビったことが有ります。本当に「当たり!」の薬が出なければ、そして出さなければ会社の収益は数百億円単位で上下動する事も普通で、「特許や製法の秘密」の塊というのが我々が飲んだり注射しているクスリなんだというのがよく解りました。

本当に出したくない特許は特許として登録せずにノウハウ自体を誰にも教えないということも当然だし、論文としては出さないのもごく日常的で、素晴らしい論文として世を賑わせている結果を横目で見ながら既に遥か前にそれと同じ結果を手中に持っていて隠している何ていうこともこれはザラだという事。

利潤を追求する組織というのはサイエンスを行っていても、利潤の最大化のために「中にいる人達」の栄誉や成果を「顔無し」の状態として保つのも当たり前だという、製薬関係者の間では「当たり前」だということが恐ろしくも有り、やるせなくも有ります。本当に「疾病という人類共通の敵を倒す」というレベルで共闘するように完全に互いの情報とノウハウを共有したらどんなことが起こるんだろうかということも夢想したりすることも有りはしますが、実際はこういった水面下での激しい殴り合いのような競争があってこその進歩なのだろうということもまた一面の真実なのでしょう。

しかし、巨大製薬会社のようなスケールメリットが無いと製薬競争では生き残り組に残れないというような記事を読みますが、私はこの点にはちょっと懐疑的です。実際に研究費の潤沢さと優れた頭脳の数という意味では巨大製薬会社は特許と人材で多くの敵を脅かすのでしょうが、実際には弱小と言われる所でも限られた資源を使って素晴らしいアイデアで単発の優れた薬を作って疾患治療に立ち向かってくるベンチャーもあるわけで。

とは言え、これらの芽吹いてきた小さな会社を札束で買い叩き続けるのもまた巨大製薬会社であることも事実なのですが、、、。
まあ、我々使用者側にすれば、優れた薬が適正な価格で出さえすればどこから出ようがそれほど構わないわけではあります。

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