2012年2月5日日曜日

外から見た日本の研究・独創性

10年ほど前にネット討論で話題となった研究における独創性に関する議論を読んでいて徳大酵素研の市原明先生の文章が目にとまった。そのままコピーさせていただいたが、日本だけの問題では無いと思えるので、文章にコメントを付けてみた。(青いところはオリジナル。)

市原 明、何故日本には独創的研究が育ち難いか?(2000/09/27)
1)討論や批評が少ない:画一性(ユニークであろうとしない、遠慮、憎まれたくない、恥の文化、沈黙は金、不言実行)、封建的、知識偏重教育、疑問が少ない、研究方向の自由度が少ない(指導者に従順)、価値判断が弱い    
2)国際性が小さい:英会話が下手(情報が入らない、討論できない、一流の雰囲気を味わえない)、日本語会話も下手(話題が少ない、センスがない、遠慮、謙虚、臆病)、日本語は論理的でないか?日本の学会も英語で発表、討論したら?
3)哲学がない:総合力、まとめる力が弱い、各論的
4)保守性:他の研究機関に移る意欲が少ない(土着性)、社会構造に問題(住居、ポジション)、テーマを変えない(勇気がない)、年功序列、若い人(研究)を先物買いしない、人にも機関にも年限制度を導入すべきである。
5)甘えの構造:すべて研究進行に決定、審査が必要であるが、情に流される(学閥、師弟関係)、推薦状などは形式的で本当でない
6)個性を殺している:嫌われたくない、反骨精神がない、自分を最大に見せようとしない(研究に謙虚や遠慮は美徳か)、説得を遠慮する(研究グループが大きくならない)、研究での積極的性格と社会での謙虚な性格の矛盾。
7)米国の流行を追う傾向:伝統歴史が薄い、真似をするならむしろ欧州ではないか。
日本の研究費の総額は決して少なくない。だから相当のレベルの研究が達成されている。しかし独創性の点では問題がある。その原因は以上のように複雑に関連し生活様式や風土文化に根ざしている。更に良い点は欠点でもある。しかし改革しなければならず、またその余地はある。ただし下からの改革は困難である。制度を変えるのは時間がかかる、だから指導者が全ての点で努力すべきである(指導者は上に行くほど総論的であり寛容で怒ってはいけない、しかし批判は明瞭に行い、甘やかしや放置ではいけない)


1)に関しては確かにカッコの中の一つずつについては素直に納得できないところもあるのですが、総じて個々の部分は指導者次第のような気がします。昔僕が居たラボではズケズケ言う人間が非常に多かったです。しかし、巧く、建設的に質問できる能力というのはまた一つランクが上のレベルでして、単に攻撃しただけで何も産まないか、それとも、自分が質問をした後、更に自分のステートメントを推測や考察と言う形で加えられるかはレベル次第でしょうね。
2)国際性が小さいというのは最近は少なくなってきてるような気がします。でもまあ、知性は高いし知識はあっても討論の部分になるとカラキシ駄目、、、というのは今でも国際会議の中での日本人としては普通かな。僕なんかは聴衆はカボチャと思って話し始めますから全くあがりませんが。(鈍感さを逆利用してます。)ユーモアを必ず話に混ぜるというのは訓練したり何時も意識してないと出来ないことだと思いますので、これは常々仕込みをしておく習慣があるといいと思いますよ。日本語が論理的ではないのかもといういつもの討論ですが、そんなことはないと思います。でも、英語だと余計な修辞がなくても素直に話せるのがいいですよね。同じことを日本語で話すと、「正しい日本語だけど、そんな話し方はしないよ~」というような話し方になるから不思議です。
3)各論的、、、これは余り否定できないと思いますね。でも、アメリカの研究でも各論的な話はどこでも普通です。一流どころのラボでも煮詰まってる時は「あれ?」という位ツマラナイ話してます。それに、ここんとこは気を付けないといけないんですが、結構「マジ!?」というような新鮮な話は嘘の話を塗り固めたものであることも多いのです。これは何度も経験しているし、いろんなラボの下っ端の人(若手研究者)から打ち明け話を聞いたことはなんどでもあります。
4)他の研究機関への流動性の低さは確かにもう「異常」なレベルだと思います。交流もA大学のBさんとC大学のEさんという、まるで大学の名前を背負ってることが先ず先に来るような会話が多いですよね、、、。こっちだと、どこの大学かと言うよりも個人の背負ってる名前自身がXX研のYYさんという感じですし、YYさんの履歴は先ず間違いなくカレッジ、グラジュエイト、ポスドク、インストラクター、プロフェッサーとその度にヤドカリの如く研究機関を移るのが当然ですので、東大に入学し、東大で院生をし、東大でポスドクして、東大で助教して、、、、上がりが東大教授(泊付けと交流のコマとして一、二年海外有名研へ留学)なんていうのがそれこそゴロゴロしてるというのが多いですよね。正直気持ち悪いです。あと、結果が出ない輩に対する期限は必ずつけるべきですね。予算を絞るとか。蹴り出すとか。若手の為に良くないです。まあ、お前こんな事言っててお前が蹴り出されたらどうする?とか言われそうですが、そりゃ仕方ないでしょ。競争なんだから。(笑)
坊ちゃん嬢ちゃんはそんなにお家から出て対外試合するのが怖かったのかな。(笑)
5)まあ、これが僕が日本を出た理由の一番ですね。旧帝大の金の配り方、犯罪ですし。あれだけの金持って人集めてこれだけのアウトプットって、そりゃその程度出来なかったら重犯罪ですよ。(笑)NIHのグラント審査もいろいろと批判がありますが、日本のデタラメ審査に比べたら、受かっても落ちても100倍ましかな。
6)これはよく解りません。そうなんですか?w 理屈とデータをぶつけ合う場で遠慮は要らんですわな。科学にはSPECIALISTは居てもAUTHORITYは不要ですから。
7)欧州の研究スタイルを追うというのは僕も大賛成です。アメリカの研究はホント近視眼的なのが多すぎ。Publish or Perishという韻の踏み方は聞こえはいいけど、このせいで多くの面白い研究が細切れ風のツマラナイものになっているのもまた事実。しかし、欧州もイギリスとかはジェノムプロジェクトのころからアメリカの真似を初めて大規模研究に金をつぎ込みすぎて小規模でも優れたラボが沢山干上ってしまったと聞いてます。アメリカのマネもしていいものとしてはいけないものを峻別しないとね、、、。まあ、それは会議に集まる教授とそれに連なる馬鹿文部官僚の質次第なんですけど、、、あ、馬鹿って言っちゃってるな。(笑)
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